四話:約束と出会い
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魔法を使う事の出来ない彼だがその実力は非常に高くジュエルシードの回収の大きな助けになっている。なのははそんな彼に嘘をつくことはせずに先程あったことを伝える。その時にヴィクトルの特徴を伝えていれば違った未来が待っていたかもしれないが彼女はこの時、親切な人としか彼に伝えなかった。
「そうだな……確かにその人の言う通りに他人に頼るのが正解だったかもな」
「でも……迷惑じゃないのかな?」
その言葉に青年は少し考える素振りを見せてエメラルド色の目を細める。整った顔立ちの彼がそのような行動をすると非常に様になる。最近、『翠屋』に来る女性客の数が増えたのは彼の影響だというのがもっぱらの噂だ。最も、当の本人はそんなことなど露知らずにまっとうな職場で働ける喜びを噛みしめているのだが。
「確かに迷惑かもしれない。でもな、なのは。人間は迷惑をかけて、かけられて……支え合って生きていくものなんだ。自分一人で全ての事ができると思うなんて傲慢でしかない。……少なくとも俺はそう思っているよ」
「支え合う……」
「なのはが倒れそうなときは俺が支えるし、ユーノやこの家のみんなだってなのはを支えてくれる。逆に俺達が倒れそうなときはなのはが支えてくれるよな?」
そう言って、青年は優しげな微笑みを浮かべながらポンポンとかつて共に旅をした“アイボー”の少女と同じように頭を撫でる。そんな仕草になのはは恥ずかしくなって顔を赤くしながらその手を払いのける。
その行動に青年は気を悪くするどころか、さらに微笑まし気に笑みを深める。傍から見れば歳の離れた兄妹というのがしっくりくるだろう。因みに余談だが、なのはの実の兄である高町恭也がその事に密かに危機感を覚えて彼を僅かではあるが敵視しているらしい。
「もう、そんな事ばかりするなら支えてあげないもん!」
「ははは、悪い悪い」
笑いながら謝る青年に反省の色は見られないが、なのはも本気で怒っているわけではないので文句を言うのを止めて信頼の眼差しを込めて彼を見上げる。なのはは兄とも父とも違う距離感に居る彼の事が好きだった。近すぎないからこそ本音を言い合える存在、相棒のような感じがしていた。そして、そんな彼の名前を口に出す。
「とにかく、相談に乗ってくれてありがとうなの―――“ルドガー”さん」
「どういたしまして」
青年の名前は“ルドガー・ウィル・クルスニク”。正史世界のヴィクトルであり、アイボーとの約束を守るために多大な犠牲を払いながらも『カナンの地』に辿り着き、その命と引き換えにして世界ひとつと少女ひとりを守り抜いたただ一人の為の英雄。
――運命を刻む二つの針は今まさに重なり合おうとしている――
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