暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
ファントム・バレット-girl's rondo-
第七十七話
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
求めに来るのだ。それをまだ未熟な俺が作った商品を売る訳にはいかないので、それはむしろ当然の処置だろう。

「えっと、確かこれに似合う感じの鞘が……」

 リズの腕に抱かれた日本刀は、向こう側が見えるかというほどの透明度の刃に、それとは対照的な黒く自己主張する柄。長さや形は典型的な打刀であり、リズが軽々と扱っているところを見ると、重量もその透き通る刃通りらしい。ただし日本刀の切れ味とは、その刀身の鋭さや美しさによって決まるわけで――

「そう……か……」

「……うん、その気持ちはよーく分かるから、そんな悲しい顔しないでね……」

 心を満たすこの感情は、単なるもったいないという感情か。それとも子を結婚式に出す親のような感情か。いたく悲しげな表情をしていたらしい俺に、リズは何とも哀れみに満ちたような表情で、俺の目の前からその日本刀を消した。鞘を見繕い終わったので、商品として店内へ送られていったのだろう。

「ああ……!」

「……だからカタナ以外にしときなさい、って……」

 作るのはカタナ以外にしときなさい――と、確かに売り物となり得る物を作り始めた時に、リズにそう言われた気がしなくもない。いや、確かにそう言われたことは覚えているが、せっかくなら日本刀作りたいと――いや、使い慣れて経験がある方が良いと思ったまでだ。

 まさかこういうことだったとは。先達の言うことは真面目に聞いた方がいい、というのは剣術の方で骨身に染みている筈だったのだが。

「……それよりあんた、アイテム預けにきたんじゃないの?」

「あ、ああ、そうだった」

 うなだれていた俺だったが、リズの呆れたような声で何とか我に返る。そういえばここに来たのは、リズにバイトのことを伝えに来るだけではなく、そのことも頼みにも来ていたのだった。ようやくショックから立ち直ると、フラフラとリズベット武具店の倉庫へ向かっていく。

 ザ・シード系列の仮想世界はコンバートというシステムにより、ステータスや名前を引き継いで別の仮想世界に行くことが出来る。俺やキリト、リズがALO事件の際にデータを引き継いで攻略できたのも、このコンバートシステムがあってこそだったのだろう。もちろん今回の仮想世界の調査も、このコンバートシステムを用いて行われる。

 ただし難点も存在する。俺たちのアイテムが文字化けしてしまっていたように、当然他の仮想世界に同じアイテムがあるはずもない。バグや文字化けを防ぐためにも、アイテムやお金はコンバートすると失われてしまう。また、同じキャラを用いてログインする都合上、コンバートし直さなくては元のゲームにはログイン出来ない。……リズに怒られたのは、こういう事情もある。

 まあつまり、信頼出来て確実に紛失しない場所に預けなくては、おいそれと
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ