彼らの平穏、彼らの想い
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うが、副長は秋斗が一番戦いやすいように出来る状況を想定していたのだ。
知らなかった情報を教えられて、秋斗は一寸だけ目を見開いた。
「ただの兵士じゃ満足できねぇ。俺達は金が欲しいわけじゃねぇ。地位が欲しいわけじゃねぇ。名誉が欲しいわけじゃねぇ。
生きたいとは思う。けど命よりもっともっと大事なもんがあんだ」
視線が絡んだ。部隊長の突き刺すような視線に、秋斗は目を細めて返すだけ。
ぐ、と脚に力を入れた部隊長は、大きな息を吐きだして、心を決めたように不敵な笑みを彼に向けた。
「だからちょっとだけ付き合ってくれよ……徐公明っ」
突然の動きは右手の槍から。戦場で行うモノとなんら変わらない一突きを放った。
当たればただでは済まない研ぎ澄まされた一閃。兵士としては最上級の実力と言えるも……彼は空いている左手を添えて軌道をずらし、横薙ぎを封じた。
一撃で終わるのは徐晃隊である限り有り得ない。その為の二重武器で、盾を捨てた攻撃の型。
片手の振りきりは小さく器用に、部隊長の剣は彼の身体に襲い来る。
それがどうしたと言わんばかりに、秋斗は上げた片足のブーツの鉄板で部隊長の持ち手を蹴り上げた。
追撃が来る、と分かっていた部隊長は二歩下がり、また彼を見つめる。
「意地があんだよ。男として生まれた以上、誰にだって負けてられるか。全ての始まりはそんな想いだった」
徐晃隊に入ったのなら、例え誰であろうと負けたくなくなる。
厳しい訓練を積んでいるのだ。強くなれないなら意味が無い。先達は序列が付けられ、片腕に成り得たのは一人だけで、所詮、男は部隊長にしかなれていない。
満たされない。満たされない。
目の前の男だけは化け物達に負けない強さを持っている。それが悔しくてたまらない。自分達が無様にしか見えず、ちっぽけにしか感じられない。
また、部隊長の方から躍り出た。
虚実を交えた槍と剣の連撃を、易々と彼は一つの剣だけで撃ち落としていた。一合、二合、三合、と。
衣服にさえ掠らせず、抜き身の刃に恐れも持たず、ただただ冷静に。
幾分、また部隊長が離れた。
「御大将みてぇな力が欲しかった。一人でも十二分に戦える力が欲しかった。でも足りないから、俺らは群れてでも強くなるしかなかった。ありがたいし嬉しかったぜ。こんな俺らでも御大将みたいな化け物達の倒し方があったんだからよ。だけど毎日、口惜しくてたまらねぇから訓練を重ねて……強くなりてぇと願ってる」
求める強さに上限など無い。しかし一筋さえ刃を掠らせも出来なかった自分達が、黒麒麟にキズを付けられるようになった。
戦場に出てみれば、他の部隊よりも多く働ける。誰かを救って、自分達が世界を変えているのだと実感できる。
今度は両の武器を同
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