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乱世の確率事象改変
彼らの平穏、彼らの想い
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けでも戦況を動かせるように……小規模になればなる程兵士個人との信頼の方が優先されるのは言うまでもない。
 左方に突撃しろと命令が出ても、その場その場で細かい戦闘は個人同士が為すのだ。それを彼は逆手にとった。

 バカでも分かるように『三人ないし二人一組で一人に当たれ』と命じたとしても、誰が誰と組むのかはその場で判断するしかない。
 それなら前々から決めて置いた方がいい。誰かが死んだら先に圧した奴等から一人加わればいい。小さな所ではあるが、そういった意思疎通の時間こそ彼が省いたモノである。
 効率的な戦場は戦友達との絆から生まれるのだ。仲良くない奴の方に向かうよりも、仲のいい友を助けに行く方が力も上がる。だからその関係を作り上げることにこそ重点を置いたのだ。

 自分が兵士ならどうしたいか。どう動いたら死なないで済むか。どう動けば多くを殺し、多くを救えるか。個人単一では無い戦場で、兵士一人ひとりの生き残る確率を上げる為に。
 誰も考えないような思考の果てに、秋斗は徐晃隊を作り上げた。
 彼らのような意地っ張りがついて来てこその話ではあるから、少しでも兵士達との時間を多く取って、将同士の絆よりも兵士との関わり合いを優先した、ということ。

 なるほど、と一つ零した秋斗は納得した様子。

「組織の連携は一朝一夕じゃ出来ない。上だけで繋いでる絆は兵士には浸透しない。戦うのはあいつらで、命を賭けるのもあいつら。その命を守るよりも、高めて引き上げて生き残らせるように仕向けたかったってこった」
「最も死ぬ確率が高くて最も生き残る可能性が高い兵士、と彼は言っていました。伍長、十長、百人長、千人部隊長……役職の区別なく全員が戦場で等しく平等にあれ。同じ命を賭けるなら、隣を救って笑って――――」

 死ね、と。
 驕りも優先順位も無視された駒。彼が望んで、彼らが望んだ部隊のカタチ。
 ふ……と雛里は笑みを零した。隅々まで彼らは秋斗と同じく、命をゴミのように投げ捨てながら、生きる為にと力を振るう……彼の変わらない部分は、きっと兵士達という理解者の元でこそ救われる、そう思ったから。

――敵わないなぁ……

 何処にでもいる恋する少女なら、本当は自分を選んでほしいと思うだろう。
 しかし雛里はもう、彼が兵士達と同じように命を使って戦うから、その背を見送る女で有りたかった。
 将だから命を捨てるな、と咎めたことはあった。なのにいつでも彼は先頭を突っ走り、自分を使ってでも策を為す。

「男ならぁ……何かの為に強くなれ……だろ、徐公明?」

 声がしたのは後ろから。
 酒の瓶を持った一人の兵士が立っていた。

「あ、第三の……」
「その服お似合いですぜ、鳳統様。徐公明は褒めてくれやしたかい?」
「あわっ……しょの……」

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