第十五章 忘却の夢迷宮
第二話 踊るもの、躍らせるもの
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口にしそうであった―――『君こそ、彼の事を本当に知っているのかい?』と。
そう、ジュリオは、いや、ロマリアは知っている。
彼らの存在を。
最初は気付かなかった。
しかし、様々な情報や資料から検証した結果、衛宮士郎が何者かが分かってきたのである。
それを、ジュリオは口外する事は禁じられている。いや、例え禁じられていなくとも、口にする事は憚れた。何せ、その内容が内容だ。口にすれば笑われるのはまだ良い方である、下手すれば狂人だと思われてしまう。
ジュリオは崖の岩場に背中を預けると、空を見上げた。まだ高い位置にある太陽の光が目を刺す。逃げるように掲げた手の隙間から漏れた光に目を細める。
聖戦の完遂のためには、ガリアの王にして虚無の使い手の一人であるジョゼフを倒さなければならない。何故ならば、あの男が自分たちの味方となる事は有り得ないからだ。虚無の力は強大であるが、使い手は限られている。それはつまり、一人でも欠ければ単純に計算しても四分の一の戦力が無くなるという事だ。
では、どうすればいいのか?
その手段をロマリアは知っている。
だからこそ、この機会を逃すわけにはいかなかった。
失敗は許されず、確実に成功する必要がある。そのために、必要なのだ。
“神輿”が。
未だガリア侵攻におけるロマリア軍の正当性は低い。正当性が低ければ、味方の士気は上がらず、味方になるガリアの諸侯は減る。だからこそ“神輿”が必要なのだ。
それにタバサが―――オルレアン公の遺児であるシャルロット以上の“神輿”は存在しない。
もしタバサが正当な王権を主張し、ロマリア軍の先頭に立って戦えば、ロマリア軍の正当性は揺るぎなくなり、味方の士気はうなぎ上り、敵部隊の裏切りも期待できる。良い事尽くめだ。
そして、このカルカソンヌでの膠着状態は、“神輿”を担ぎ上げるのにこれ以上の舞台はない。
しかし、その肝心の“神輿”は乗るつもりはないという言う。
それを素直に受け取れる程―――ジュリオに、ロマリアに―――否、世界に余裕はない。
だから、どのような手を使ってでも“神輿”となってもらう。
「―――残念ながらこちらにも余裕はなくてね。どうしても踊りたくないと言われても、はいそうですかとは言えないよ。だから、無理にでも踊っていただきますよ。我らの賛美歌に合わせ、最後まで……ねぇ、シャルロット姫殿下」
そう、それがどんな手段であったとしても……。
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