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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第二話 踊るもの、躍らせるもの
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淡々とした冷めた声音で振り返ることなくジュリオに話しかける。

「最初からですよ。このハルケギニアにおいて、我々ロマリアが知らぬ事などありません。そう、何一つね」
「……ここまで、全てあなた達の計画の通りと言うわけ」
「それは考えすぎでは?」
「南部諸侯の寝返りは、事前にあなた達が手を回した。そうでなければ、こうまで早い侵攻が出来る筈がない」
「素晴らしい。全てお見通しというわけですか。なら、次に私たちがあなたにお願いする内容も分かっているのでは?」

 タバサは顔だけ振り返りチラリとジュリオを見る。

「思い上がらない方がいい。全てがあなたたちの思い通りになるわけではない」
「ははっ、しかし今のこの現状も全て私たちの予想の範囲なんですよ。ここ(カルカソンヌ)で足止めを食らう事も、その足止めをどうやって突破し、リュティスへと至るかも、何もかも全てです……」
「……そのために、わたしにあなた達の人形になれと?」
「そんな人聞きの悪い。ただ私たちは、この国を本来の持ち主にお返しするための一手になればとの親切で」
「余計なお世話」

 肩を竦めて顔を横に振るジュリオを、タバサは一言で切り伏せる。

「やれやれ、どうしても我々に復讐のお手伝いをさせてくれないと? たった一人であなたに何が出来ると言うのですか?」

 片手で顔を覆い、大げさな仕草で頭を振るジュリオを無視し、タバサは無言で前に向き直る。そのまま階段を上り始めたタバサだったが、不意に立ち止まると背後で肩を竦めるジュリオに向き直る事なく話しかけた。

「嘘つきを信用しろと?」
「嘘、つき?」

 僅かに低くなるジュリオの声。
 立ち止まったタバサの背を見つめるジュリオの顔には笑顔が浮かんでいるが、何処か強ばっているようにも見えた。

「ロマリアに知らない事はないとあなたは言った。でも、あなたたちは彼の事を知らない」
「……それは」

 言い淀むジュリオを置いて、タバサは歩き出す。
 動くことなく階段の上に立ち尽くすジュリオを置いて階段を上るタバサは、誰に言うでもなく口の中で呟く。

「……何より、わたしは一人じゃない」





  




 苦虫を噛み潰したかのように顔を顰めたジュリオが、去っていくタバサの小さな背中を見つめていた。身体は小刻みに揺れており、足はコツコツと落ち着き無く石階段を叩いている。タバサの背が見えなくなると、視線を下へ、決闘を終え自陣へと戻っていく士郎たちへと向けた。
 
「……彼の事を知らない、か」

 タバサが口にした言葉を口の中で反復する。
 ジュリオはそれを否定する事は出来なかった。
 だが、それは決して事実を突かれた事が理由ではなかった。
 それどころか、ジュリオこそ
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