第十五章 忘却の夢迷宮
第二話 踊るもの、躍らせるもの
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
歩いていくタバサ。ルイズたちの言葉に返事をすることなく、タバサは歩いて何処かへと去っていく。ルイズたちの視線がタバサの背へと向けられ、次にキュルケへと向けられる。キュルケは追いかけようかと迷うが、溜め息と共に顔を小さく横に振る。
「あの子なら大丈夫でしょ」
「……だと、いいんだけどね。最近何か様子が変だからちょっと心配してるのよ」
ルイズが心配気にタバサの歩いて行った先に視線を向けていると、横からキュルケの感心した声が上がった。
「へぇ〜」
「何よ」
何処か恥ずかしげにキュルケに顔を向けたルイズが、頬を膨らませて睨み付ける。するとキュルケはニヤニヤとした笑みを浮かべてルイズの頭をぐりぐりと強くなで始めた。
「わっ!? な、何すんのよっ!?」
「別に、ただ感心しただけよ」
振り払われた手でもう一度ルイズの頭を今度は優しく撫でると、振り払われる前に手を離してタバサの歩いて行った先へと視線を向けた。
「……全く、もう少し器用に生きられないのかしら、この子も、あの子も……」
長い階段をタバサは登っていた。
百メートル以上はある切り立った崖に造られたジグザグな階段をゆっくりと登っている。白い石灰岩質の階段を上がっていると、空からシルフィードがタバサの頭上へと下りてきた。ばさばさと翼をはためかせながら周囲を見渡したシルフィードは、タバサに顔を寄せると小声で囁きかけた。
「きゅいきゅい。何で背中に乗らないのね? シルフィに乗ったら直ぐにつくのにね? ねぇどうしてなのね? ねぇねぇなのね?」
翼を動かしタバサの頭上に位置を保ちながら、シルフィードが話しかけ続けるが、タバサは顔も向けずただ黙々と階段を登っている。
何の返事も返さないタバサにシルフィードが更に何かを言い募ろうとした時、階段の中腹に立つ人影に気付いた。シルフィードは慌てて空高く舞い上がる。一気に高度を取ったシルフィードは、眼下を見下ろし階段の中腹に立っていた人影に目を凝らす。
「やあ、タバサ」
タバサを待ち受けていたのは、ロマリアの神官であり、虚無の使い手である教皇ヴィットーリオの使い魔ヴィンダールヴでもあるジュリオだった。片手を上げ階段を登ってくるタバサにジュリオが笑いかける。人間離れしている美貌に輝かんばかりの笑顔。大抵の女性ならば容易く陥落するだろう。そしてタバサはその大抵の女性には含まれてはいなかった。
チラリとも視線を向ける事なくタバサはジュリオの横を通り過ぎていく。
「ああ、すみません。どうやら呼び方を間違えてしまったようですね。シャルロット姫殿下」
「―――何時から気付いていたの」
ジュリオの横を通り過ぎ、数段上がった位置で立ち止まったタバサが、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ