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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第二話 踊るもの、躍らせるもの
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イジとは思えない熟練の剣士の動きに無言で賞賛を送りながら、士郎は男の意志を断つためデルフリンガーの柄の先を水下へと叩き込―――

「っおお唖々ッ!!」

 むことは出来なかった。 
 水下に剣の柄が突き刺さる直前、男が無理矢理身体を回したのだ。体勢やら重心やら何も考えない無理矢理な回避運動は、男の身体を確実に壊した。身体の中からぶちりと同時に何十も何かが千切れる音が響き、鈍く鋭い痛みが走る。激痛に顔を顰めながらも、男は士郎の一撃を辛うじて避ける事に成功する。

「無理はするな」

 男が受けているだろう尋常でない痛みを予想し、士郎が慈悲の気持ちで体勢が崩れ死に体の男の意識を奪うために拳を握る。

「―――っ、待って、くれ」

 しかし、それが振るわれる事はなかった。
 縋り付くように士郎にしがみついた男が、痛みにえずきながらも絞り出した声で士郎に訴えてきたからだ。

「あ、あなたはトリステイン人だ、と聞いた」
「……だとしたら、何だ?」

 男は震える手で持ち上げた杖をデルフリンガーに押し付け、周りから鍔迫り合いをしているかのに見えるようする。

「な、ならばシャル、ロット―――い、いや、タバサさまを、知って―――」
「……タバサがどうした?」

 士郎の攻撃を完全に躱す事は出来なかったのだろう、男は身体をふらつかせ、顔を痛みに歪ませている。士郎は話を聞く前に倒れないよう男の体を周囲から分からないように支える。

「頼みが、身代金の、袋、中、手紙が、それを―――」
「分かった。渡そう」

 士郎が頷くのを見た男は、仮面で隠されても分かる程ほっとした雰囲気を出すと、士郎に寄りかかるようにして倒れた。倒れてきた男を抱きとめた士郎は、そっと地面に男を下ろすと、小舟に待機していた従者が走り寄ってきた。従者は士郎の足元に袋を置くと、士郎に何も言うことなく慌てた様子で男を抱えると船に向かって走り出した。ギーシュたちが身代金をまだ確かめてないと従者を止めようとするが、走り出そうとしたギーシュたちを凛が足を引っ掛けて転ばせた。ゴロゴロと地面の上を転がっていくギーシュたちに苦笑いを浮かべながら、士郎はじと目でこちらを睨みつけてくる凛と目配わせをすると肩を竦めてみせた。

「はぁ、どうやらまた厄介事が来たようだ」

 








「や〜と、終わったようね」

 カルカソンヌの真下にある小高い丘の上。そこに陣取ったルイズたちの姿があった。遠眼鏡で士郎の戦いぶりを眺めていたキュルケは、士郎の勝利を確認するとぐるりと周囲を見渡した。周りにはルイズやタバサ、ティファニアにセイバーの姿がある。

「で、あれって結局どれだけ稼いだのかしら?」
「百人でしょ。一人千エキューと考えても十万……城
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