第十五章 忘却の夢迷宮
第二話 踊るもの、躍らせるもの
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った髪を払い凛は肩を竦ませた。
朝方から始まったこの士郎の決闘も、例のごとく賭けが行われていたが、それを仕切っていたのはギーシュたち水精霊騎士隊の面々であり、何故かその中心となっていたのは騎士隊の一員でもない人物である凛であった。凛はギーシュたち騎士隊の面々を手足のように操り、ガリア、ロマリアと両軍から掛金を募って賭け行っていた。何時しかどこぞの裏稼業の方ですか? と言いたくなるような雰囲気を凛たちは纏い始めている。
士郎は凛に隊長の座を奪われただけでなく、騎士隊はマフィアに変えられてしまっていた。
一体お前たちは何処へ向かっているんだ……。
喉まで文句がせり上がってきたが、士郎は勿論言葉には出さない。
無理矢理飲み込む。
何故なら口にすれば確実に殴られるからだ。
頭が痛くなる現実から逃げようと凛たちに背を向け、さっさとこの下らない決闘騒ぎを終わらせようと、最後の挑戦者である男が船から上がってくるのを待つ。暫くすると、船から降りた男が十メートル程の距離を取って士郎の前に立った。
「衛宮士郎だ」
「……すまないが、今は、名乗る名がなくてね」
頭を下げてきた男に対し士郎が名乗りを上げるも、男は小さく頭を振るだけで名乗りを上げることはなかった。そして男は無言で杖を士郎に向ける。男は顔を鉄の仮面で覆われており、どんな顔をしているのかも分からない。声や服から覗く手足の肌の様子から、そう年かさの者ではないだろう。
「―――」
「―――へぇ」
男の構えを、纏う雰囲気を見た士郎の身体に緊張が走り、身代金の宝石を品定めしていた凛の目が細められる。
強い。
士郎は確信する。ガリアのメイジは朝から百人ばかり相手にしてきたが、その中で確実に一番強い。
デルフリンガーを握る手に力を込め、男の全身を見る。
若い……だが、落ち着いている。
男が被った鉄仮面の向こうを見抜くような士郎の強い視線。それに押されるように、男が士郎に向かって走り出した。仮面を被っているため表情どころか呪文を唱えているかすら分からない。士郎に向かって駆け出した男が、地面を蹴り飛びかかる。レイピアのように鋭く硬い軍杖が青白く輝き士郎に迫る。“ブレイド”の魔法により無類の剣と化す軍杖。メイジが近接戦を行う際に使用する魔法―――“ブレイド”。
疾い―――だが、
「っな?!」
―――まだ足りん。
衛宮士郎を相手にするには何もかも足りなかった。
士郎の眼前数センチを青白い光が通り過ぎていく。バックステップで下がるのではなく、剣で受けるでもなく、最小限の体捌きで男の攻撃を躱した士郎は、攻撃が避けられ僅かに体勢が崩れた男の隙を逃す事なく一撃を繰り出す。メ
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