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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第二話 踊るもの、躍らせるもの
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この世界の魔法との違いから、凛に混乱が生じるのではと思っていたのだが、蓋を開けると拍子抜けするほど何も起きなかった。確かに竜やグリフォン等の幻獣、この世界の魔術―――魔法に対して驚いた様子を見せてはいたが、士郎が想像していたように取り乱す事はなかった。どちらかというとセイバーとの再開の方が驚いていたように見えた程である。約十年越しの再開に、流石の凛も鬼の目に、とは言わないが……瞳を潤ませていた。寄せ場いいのに士郎がそれについて指摘したところ、照れ隠しにしては酷すぎる程の暴行を受けた。自業自得である。
 ルイズたちとは、士郎の知る限りまともに話している姿は見ていない。どちらかというと、ルイズたちの方が凛を避けているように見える。代わりにではないが、ギーシュたちは随分と積極的に凛に話しかけていた。それに対して凛は特に拒否することなく、随分と楽しそうな様子で色々と話しをしていたようだ。初対面の相手には対しては、基本的に凛は猫をかぶ―――丁寧な姿を見せるのだが、士郎への暴行と言うには憚られる拳の嵐を叩き込む姿を既に見せていたからか、最初から普段のざっくばらんな調子で相手をしていた。話す内容は、どうやら士郎の話が中心になることが多く、以前カルカソンヌで士郎が生死の境を彷徨う羽目になったのも、水精霊騎士隊の誰かが話の流れから漏らした情報のせいであったという。
 
「―――しかし、流石にもう止め時だと思うんだが」
「あちらさんも目星い貴族どもが全員やられたんで、随分と弱気になっているようだしねぇ。まあ、それも仕方のないことか。剣一本だけでメイジを百人抜きだ。……流石の貴族も腰が引けるってもんよ」
「だ、そうだぞ」

 デルフリンガーの言葉に乗っかる形で士郎が凛に進言する。

「ま、確かにそろそろ限界ね。分かったわ。なら、次の一戦で終了しましょう」
「オーケー、了解だ」

 やっとの許可に、知らず士郎の口元に笑みが浮かぶ。すると、丁度タイミング良くやっと次に誰が来るのか決まったのか、ガリア軍側から小舟が一艘近づいてきていた。船に乗っているのは、一人の黒い鉄の仮面を被った長身の男だ。粗末な革製の服を着込んでいるが、貴族の証明であるマントを羽織っている事からどうやら一応は貴族―――メイジのようである。
 しかしどう見ても貧窮してそうな男である。
 最後だから絞れるだけ絞ってやろうと気合に満ちていたギーシュたちの顔から一気にやる気がなくなる。
 
「うっわ〜。姐さん最悪ですぜ。よりにもよって最後の相手はどうやら貧乏人ですよ。あれじゃいくらも身代金なんて出やしねぇ」
「よしなさい。でもまあ、確かに期待外れね。ちょっと百人抜きした程度で腰が引けたってことでしょ」

 妙に三下臭を漂わせながらギーシュが媚びた笑みを向けると、鼻を鳴らしながら肩に掛か
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