三話:疑問
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私は強くなれたというわけだ」
「エージェント……なんだか、カッコいい…」
フェイトの言葉にヴィクトルは笑みを深める。気分としては子供にパパのお仕事ってスゴいんだね、と誉められた父親そのものである。実際、エージェントという職業は相当な名誉な職業で彼の故郷であるエレンピオスではエージェントというだけで一目置かれる存在である。
詳しく説明するとエージェントとはクランスピア社―――通信や医療など様々な分野でトップシェアを誇り、何よりも迅速な方針転換によって常に世界の趨勢を見極めて、ほぼ業績トップ独走状態の経営を維持し続けている巨大複合企業で。その中で活動する、それぞれの専門分野を受け持つ職員のことである。
また、その分野のリーダーとなる人物は『トップ』更にすべてのエージェントの中で抜きん出た成績を持つ者に『クラウン』の冠詞が与えられクラウンエージェントと呼ばれる。この称号は、ヴィクトルの兄であるユリウス・ウィル・クルスニクが保持していた。因みにだが『クラウン』の上を行く最高のエージェントの称号こそが彼が名乗っている『ヴィクトル』なのである。
先代の『ヴィクトル』は彼の父親であると共に、クランスピア社の社長であったビズリー・カルシ・バクーであったが、彼が父を殺した時にその称号を受け継いでいる。さらには、彼は一介のエージェントではなく、副社長だったので、表向きにはクランスピア社の社長の座も受け継いだのだが、その地位は肩書きだけのもので彼自身が社長として働いたことは無かった。
「ふーん、それであんたは強かったのかい。魔法もないのに良く戦えるよ」
「むしろ、私からすれば魔法という物の方が異質だ。私の世界にもそれと似た『精霊術』と呼ばれるものがあったが、君達のような科学的な理論から成り立つ物ではなかったからね」
「なんだいそりゃ? 面白そうだし、見せてくれないかい」
「残念だが、私にはその適正がなくてね。お見せすることは出来ない」
精霊術というのは、リーゼ・マクシアに住む人々が使う、精霊の力を借りた術の事である。個人差にもよるが、素手で人を容易く殺すこともできる力は精霊術が使えないエレンピオスに住む人々にとっては恐怖の対象となり、リーゼ・マクシア人への迫害に変わった過去もある。
だが、それが、エレンピオス人がリーゼ・マクシア人に劣る理由にはならない。ヴィクトルしかり、かつて共に旅をした仲間にしろ、精霊術など使えなくとも圧倒的な力を持つ手練れはごまんといる。
何より、ヴィクトルはかつての仲間であるリーゼ・マクシア人の中でも一番といってもいいほどの手練れ達を一人で皆殺しにしたのだから。最も、自分には『骸殻』の力があったから勝てたのだろうとポケットの中にある黄金の懐中時計を触りながら彼は心中で一人呟
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