暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
epilogue
one day
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い出してからさほど時間がたっていないことと……何より彼女自身の「背景」を考慮すればそれは驚異的と言っていい上達速度なのだが、牡丹はそれには触れずに当たり障りのない返答を返す。

 彼女は、「あたりまえ」であろうとしているのだ。

 「いやぁ、失敗、よりもなんというかっ、敗北、のほうがっ!」
 「敗北の方が?」
 「一層惨めだねっ!」
 「そうですね」
 「ああっ!? ボケ殺しっ!!?」

 当たり障りのない会話をしながら、その真意に思いを馳せる。

 ―――料理を、教えて欲しいんだっ!
 ―――やっぱりっ、ここは普通にっ、カノジョとしてさっ!

 (……「普通に」、ですか……)

 彼女は、「普通」ではない。牡丹も自分が普通だとは思わないが、それと比しても彼女はよく言えば波乱万丈、悪く言えば……過酷な人生を送ってきた。それこそ料理どころかあらゆる「普通」を奪われるような。

 (その生活は……「悲劇のお姫様」は、嫌なのですね)

 ―――えへへっ、やっぱり牡丹さんとはっ、友達ですしっ!
 ―――なんでも任せちゃうのはこころぐるしーわけですよこれがっ!

 彼女は、自分のような従者の仕える「お姫様」ではなく、「友人」を望んだ。
 ならばあくまで、「友人」である。

 「そろそろ火加減くらいは覚えて欲しいものですね。焦げた分は自分が」
 「いやいやいやっ! 私が食べるよ焦げ目玉焼きっ!」
 「……しかし、」
 「そこははんせーの意を示すわけですよっ!」

 自分も、彼女を「友人」と見る。
 「使えるべき人の客」ではない、一人の「友人」として。
 「病み上がりの病人」ではない、並び立つ「仲間」として。

 そして「悲劇のヒロイン」ではなく、「一人の女の子」として。

 「では、そのように。早く普通の目玉焼きが食べられるように頑張ってください」
 「はーいっ! 了解でございますっ、お師匠さまっ!」

 彼女と、軽口を叩き合うのである。





 「……ったく……」

 そんな二人の会話が、俺には丸聞こえだった。

 「まーたアイツは……」

 寝起きの頭を抑えながら、深々とため息を一つ。アイツはどうにも自分の体を軽視する傾向がある。今でこそある程度……いや、昔のごとく有り余ってるほど元気はあるものの、一応は病み上がり、になるのだ。

 「飯くらいちゃんとしたものを……って、これが牡丹さんの気持ちか……」

 ずいぶん前に、己が受けた仕打ちを思い出す。女性にあそこまで無理強いして食え、というのも若干アレだが、それでも焦げたものを食わしていいわけはあるまい。そして牡丹さんもそれはわかっているはずなのだが。

 「牡丹さん、アイツには甘いんだよな……」
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