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Fate/stay night -the last fencer-
黒守黎慈とフェンサー(4) ─交錯する心─
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 微睡みから覚める意識。目を開ければ、映るのはいつもとは違う天井。
 窓に掛かるカーテン越しに差し込む朝日を見て、夜が明けたのだと認識する。

 頭がボーっとする……ろくに眠れなかった。
 それもこれも、昨日のフェンサーとの会話のせいである。

 その願望の内容など知らぬまま、平行線を辿る話し合いは不毛極まるものだったが、既に譲れない境界線を越えた彼女の言葉に我慢出来なかった俺のせいでもある。
 聖杯戦争を勝ち抜いたとして、『私の願いを令呪を使ってでも止めろ』というのは、共に戦う相棒への言葉として余りに一方的ではなかろうか。

 願いを教える気はない。その叶え方とやらを変えるつもりもない。
 彼女の願いは黒守黎慈の矜持に反するから、気に入らなければ令呪を以て律せよ。

 昨晩の数時間に及ぶ話し合いにもなっていない主張のぶつけ合い、そこで得られた確実な答えはこの二つだけだ。
 さすがに俺も頑固ジジイというわけではない。あれだけ話し合おうとして拒絶されたのならば、こちらがいくらか柔軟に、考え方を変える必要がある。

 まず現状のフェンサーの頑なさの理由を知る手段はある。

 それこそ令呪を以て願いに関する情報を話させることだ。
 ただ原則として彼女の嫌がること、不本意な命令はしないと誓っているのでこれは最終手段である……最終的にでも使いたくない手段である。

 もう一つは条件は不明だが、時折夢に見る彼女の記憶…………覗き見は趣味が悪いが、そこから答え、あるいはヒントでも得られないかというもの。
 この手段も出来れば使いたくない────というより、彼女の記憶を夢見する方法がわからないので、ほとんど偶然的要素に頼る形になるのも確実性がない。

 既に夢見した内容からいくらか推察することはできるが、全て憶測に過ぎない。 
 あの青年に纏わる願いだというのが一番有力だが、これすらも100%とは言い切れない。
 自己救済なのか他者救済なのかすら分からないし、万が一誰かを救うなんて願いですらない可能性だってある。

 一つ不可解なのは夢がフェンサーの記憶だとして、それがフェンサーの視点で見るものと青年の視点で見るもの、二つあることだ。

 他者の記憶を覗く魔術はあるが、青年と俺の繋がりは一切存在しない。
 共有に類する魔術で、フェンサーが彼の記憶を保有しているというのが妥当なところだろうか。
 だが共有だの共感だのの魔術は一時的なもので、他者から略奪でもしなければ完全なる保存は不可能だ。
 保持者に影響を与えず保存する中では、優れた記憶媒体に情報転写するのが一般的だが、その手段が使われることは稀である。

 そうでなければ封印指定を受けた魔術師が幽閉されることも、死した後に脳をホルマリン漬けにされて
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