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Fate/stay night -the last fencer-
黒守黎慈とフェンサー(4) ─交錯する心─
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慈は文字通り波瀾万丈。
 正直自分でも進んで思い出したいようなモノではなく、自分の過去についてなど誰にも話したことすらないのだ。

「すまないな、しょうもないもん見せちまって」
「なんで貴方が謝るの?」
「いやいや、つい最近の記憶ならまだしも、俺の子供の頃なんてろくでもねえ出来事しかなかったからな」
「……昨晩も含めて、何度か見た中には確かに信じられない内容はあったけれど」

 物心つかぬ内に黒守家から逃げ出し、物心ついてしばらく後に両親が他界。
 黒守家に引き戻され、魔術師としては遅すぎる時期から拷問のような教育が始まった。 わざわざ記憶の底から引っ張り出したくはないが、第三者からは目を覆うような世界だったはずだ。

 感性の狂った物好きなら話は別だが、虐待に近い手段で人間が身体を弄りまわされ、魔術の刷り込みを行っている光景など好んで見たいと思わないだろう。

 一般論にしたくはないが、長く続く魔術家系であるほどその育成や造成は陰惨を極めていることが多い。
 魔術の業は一子相伝。受け継ぐべき者が自壊しては全てが無に帰す為、あらゆる手法を以て、本来なら人の身に余る魔術因子を後継者に伝授する。
 個人的には嫌いな思考とはいえ、優秀な血統であればあるほど適合するものだが、無理矢理にでも完全適合させる場合、後継者作りへの着手が遅れた場合等、通常では考えられない術を使ってでも受け継がせようとする。

 その術技法の中身は家系それぞれで変わるだろうが、一つだけ言えるのは真っ当な人間としての機能を残していられるのはどれほどの低確率か、というものだ。

「滅茶苦茶だっただろ? 俺だってよくもまあ普通に生活出来る身体で居られてるなと思うからな」

 あっはっは、なんて笑い話にしようと思ったのだが、生憎と背中を流すフェンサーから伝わってくる雰囲気は笑い話では済まない。

 多分俺の過去に対する憐憫や憤り、果ては憎悪に近い感情が渦巻いているのが分かる。
 マスターとサーヴァントは互いの状態をある程度感じ取れるが、そこから伝わってくるほど彼女が抱いている思いが強烈に感じ取れる。

 けれど彼女にそこまで想ってもらうほど、俺は自分の過去について悲観していないし、現在に引きずってもいない。

「気にするなよ。魔術師なんて誰でもそんなもんだ。一緒にするのもどうかと思うが、英霊になるようなサーヴァント達の過去だって似たようなもんだよ」
「貴方は、本当に聖杯に願いたい事はないの? 過去についてでも、未来についてでも構わない。少しの幸福を願うだけでも、意義はあるでしょう?」
「俺の過去を覗いての意見なら、それは余計なお世話だぜ?」

 彼女が俺に抱く諸々の感情、全てを不要だと言い切った。

 はっきり言っておかなければ、フェ
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