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Fate/stay night -the last fencer-
黒守黎慈とフェンサー(4) ─交錯する心─
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てしまえば楽だろうな。
 こんなハプニングはフェンサーとの間でしか起こらないだろうけど、今後はもっと肉体に自信を持てるよう鍛錬しておこう。

 とりあえず風呂椅子に腰掛け、フェンサーに背中を任せる。

「で、なんで唐突にこんなことしたんだ。からかうだけならもう少し違った方法があっただろ」
「昨夜、ちょっと諍いになっちゃったから。怒ってないかなーと思って」
「裸なのは無条件降伏か何かか? あれで気持ち引きずってフェンサーへの態度を変えたりしねえよ」

 何でもない理由に思わず苦笑する。
 それほど気にするなら口に出さなければ良かったものを。

 互いに少しだけ踏み込んだ部分に触れた話をしたのは確かだが、それはフェンサーが俺を信用してのことだと思っている。
 昨晩のフェンサーの話をそのままの意味で受け取るなら、出来る限り早い段階で話し合わなければならない内容だった。
 この問題についてはまだ進展は無理だろうが、もう少し信頼が深まれば、俺から聞けるかもしれないしフェンサーから話してくれるかもしれない。

「最初におまえのことを聞いたとき、ほとんどのことが秘密だったが……あの時聞けば、願いが何なのかは教えてくれたのか?」
「どうでしょうね……当たり障りのないことを言ったかもしれないし、全てを話しはしなかったと思うわ」
「そうか。でも話してくれたってことは、必要だと思ったからだろ? そのうち詳しく話してくれるのを待つさ」
「貴方が考えているような理由ではないのよ。ただ、いずれ知られることだと思ったから」

 その言葉にドキッとした。

 俺がフェンサーの記憶を垣間見ていることを知られているのかと。
 望んではいなくとも無断で覗いている事実に変わりはなく、彼女に対して内心後ろめたく思うのは当然だ。
 パートナーに対して誠実であろうとしている分、自らの不実は不信感となって返ってくるだろう。

 だから続くフェンサーの言葉は、想像していた通りのものだった。

「レイジ、私の過去を夢に見てるでしょう?」
「っ……それは……」
「特に思うところはないのよ? 知られると困ることもあるけどね。それに私も、貴方の過去を夢に見ているから」
「え?」

 それは、考えてもいなかった。

 サーヴァントは既に死んだ身だ。霊体であるが故に、彼らに夢を見るという事象は発生し得ない。
 フェンサーの話を信じるなら、契約したことにより霊的に繋がっていることで、睡眠中に互いが互いの記憶層に沈んでいる感じか。

 俺の過去なんて誰かに見せられたもんじゃない。

 聞かせるような話ですらないというのに、直接見られているのは申し訳なさすら感じてしまう。
 冬木に引っ越してきてからは多少マシな人生だとは思うが、幼少期の黒守黎
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