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Fate/stay night -the last fencer-
黒守黎慈とフェンサー(4) ─交錯する心─
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てもいいが、まだその時ではない。精神を集中し、心体ともに静めなければ。

「どう? どこに触れてるか、わかる……?」

 気づけば掠める程度ではあるが、指先が何かに当たっている。
 そのまま体のラインをなぞるように、フェンサーの手がゆっくりと指先を誘導していく。

 目を閉じているせいで、正直どこをどう触っているかは分からなかった。
 どこに触れていても彼女の柔肌は沈むように、弾き返すように俺の指に感触を伝えてくる。
 手の位置で大体どのあたりかは予想出来るが、どこを触れているのかは軽くなぞっているだけの状態では詳しくわからない。

 山をなぞるような動作の時だけは、どこをなぞっているか否が応にもわかってしまうけども。

「んっ……ふぅ……」

 上下左右に縦横無尽、好き放題に俺の腕を操り、自らの体を余すところなく、俺の指先に感じさせる。
 視覚を遮断しているせいで触覚に意識が向き、普段以上に触れているものを強く深く認識してしまう。

「は、ぁ……っ……」

 自分でやっていることとはいえ、多少くすぐったいのだろう。
 吐息と共に漏れる声はくぐもっており、意識して発しているわけではない。

 からかうような言葉は既になく、ひたすらに指先の感覚に没頭していた。

 ただその音は、あらぬ感情を沸き立たせる。

 わざとやっているのか無自覚か、雄の情を掻き立て、雄の欲を掻き毟る魔性の聲。
 研ぎ澄まされているのは触覚に留まらず、聞こえてくる音全てが目の前の光景を想起させる。
 見ないがゆえに頭の中で想像され映されるフェンサーの姿。声は浴室内で反響し、塞ぐことのできない耳から侵し、体も心も蝕んでいく。



 放っておけば暴走しかねないほど混乱と興奮の最中にある黒守黎慈と、それを覚めた視点で傍観するもう一方の黒守黎慈の意識。



(よし。肉体に付随する意識と、自己を俯瞰する意識との切り分けは出来た)

 ずっと精神制御を行い、意識を分断することに集中していた。
 我を忘れて動き出しかねない自分の身体を、遠隔操作するようにして抑えつけ、雑念や過敏になった感情、膨張した欲求反応を順に消却、処理していく。

 こうなればこっちのものだ。
 自分の体だの意識だのを自分でコントロールするのは簡単だし、出来て当たり前のことだ。
 まさかお風呂でシャワーを浴びているだけだったのに、こんなことを強いられるとは思わなかったがそれも終わりだ。

 後は一人で盛り上がってるこのアホを止めなければならん。

「おい、フェンサー」
「んぅ……ふぇ?」

 もう夢中になりすぎて前後不覚に陥っているようにしか見えないが、俺のサーヴァントがそれでは困る。
 未だに目を瞑ったままなのは褒めて欲し
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