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Fate/stay night -the last fencer-
黒守黎慈とフェンサー(4) ─交錯する心─
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なく、英霊たちの人生など現代では及びもつかないものだろうし、彼らほどの者が成せなかった事なら聖杯の一つくらいなければ不可能だ。

 たとえその願いが余人には取るに足らないことであったとしても、俺たちに貶めるような真似は絶対にできない。

「レイジ、一つだけ答えて」

 一転して真剣な声。

 有無を言わせぬ迫力すら込めて、フェンサーが問う。

「運命なんてものが存在するとして、それが絶対に不幸な結末に繋がっているとしたら。
 本人にも他人にもどうしようもなくて、変えられない悲劇があるとしたら、貴方はどう思う?」
「どうする、じゃなくてどう思う、か? そうだな……言っておくと、運命って言葉は嫌いなんだが…………
 己の命に真摯に向き合って精一杯生きたのなら、結果の幸不幸を問わず満足するんじゃないか? 残していく者には申し訳ないが、全力で走り抜いた先が崖の向こうだとしても、きっと納得して落ちていくだけだよ」
 
 俺に聞かれた以上、俺の意見を言わせてもらおう。

 もしもこの答えがフェンサーの願いを全否定するものであったとしても、これが今の黒守黎慈を形成する根幹、譲れない部分に他ならない。
 フェンサーにとって譲れないものと正面から衝突する価値観だとしたら、確かにいつかはぶつかり合わなければならない話だったと思える。

 こんな質問をしてくる以上、この話が彼女の願いに関わらないはずはない。

 しかしこれ以上の問答はないだろう。
 一つだけと彼女が言ったのだ、恐らく俺の答えがフェンサーにとっても答えになる。

 俺はフェンサーを否定したい訳じゃない。
 結局は俺個人の価値観の話で、自分かまたは誰かの不幸な運命(結末)を変えたいというなら別にいいと思う。
 言い換えれば誰かの幸福を切に願っているということで、世の中に溢れる下卑た欲望とは比較にならないほど清純な願いだ。

 ────────だけどそんな単純な話なら、きっとフェンサーは今。

「やっぱり、レイジは強いね。でもだからこそ、私は私の願いを叶えなきゃいけないって再確認出来た」
「………………」
「ごめんね、サーヴァントがマスターの手を煩わせて。きっと私の願いはレイジを否定するモノだと思う。
 秘密の多い女で申し訳ないけど、もう少し付き合って。記憶を覗くことは止めないから、もし私の願いに気付いたらそのときは──────」

 昨夜と同じことを言いかねないフェンサーを、頭を軽くはたくことで止めた。

 振り返ってしっかりと彼女の顔を見つめる。

 本来マスターとサーヴァントは聖杯を獲得する上で、利害が一致しただけの協力関係に過ぎないだろうに。
 何故彼女はこんなにも俺のことを信じて優先するのか。その答えもこれから知ることが出来る
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