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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十五話 参謀長との面会
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ています。
強いて言うのならば、高等外務官の当主を擁する子爵家に産まれた方に相応しい、
品格と一流の主人役の技術を持った御方としか言えませんね。
我々はこれが初対面ですのでこの程度しか言えません。」

「!? 私の事を・・・いや、兄の事を知っているのかね?」
「はい、帝国西方領の軍服を来た、『メレンティン』大佐殿。
まぁ十中八九は帝国高等外務官であるマルデン子爵閣下の親戚だと当りをつけたのです」

「いやはや、驚いたよ。まさか、軍人としてではなく氏素性から答えられるとは思わなかった。不思議な気分だ」
ひとまず主導権を握れた事に安堵し、豊久は微笑を浮かべる。
 ――この世には不思議なことなどなにもない、ってね。

「戦争になる前から皇国・帝国間で交渉が行われていましたからね。
私は北領に赴任する前に高等外務官殿の名を耳にしたのです。」
「成程ね。君は貴族――いや、君の国ではショウケと呼ぶのか、その家の産まれか。」
「えぇ、その通りです。元々は良馬の産地を統治していた主家の下で馬の管理を取り纏めていた家だそうで。まぁそこそこの家柄ですね」
 そう言いながらも僅かに胸を反らしている。
再び値踏みする様に見た後、メレンティン大佐が口を開いた。
「少佐、君は中々どうして現実的な考えを持った人間の様だ。
そして、それに相応しい見識を持ってもいる。」
「鎮定軍参謀長殿にそこまで言っていただけると面映いですね。」
この北領を俯瞰し策を練っていた参謀の世辞に豊久は笑を深めた。少なくとも一流の将校であることは豊久も理解している。
「君はこの戦いで〈帝国〉軍をどう評価したかね?」
「私は感想戦の御相手が出来る様な立場ではありません。
参謀長殿とは持っている情報量が違いすぎます」

「構わない。君に尋ねたいのだよ。漠然とした感想でもいい」
そう言われ、豊久は眉をひそめた。
 ――困るな。喋りすぎた感じがするのだが。
「その前に黒茶をもう一杯。」
 従兵がすぐに注いでくれた。
「あぁ有難う。――そうですね。当然と云えば当然でしょうが、錬度の違いには驚かされました。
元々〈帝国〉は大陸において戦争によって領土と農奴の獲得を行っていました。
皇国は、国内の平定の後は太平を謳歌し、貿易による経済的な勝利によって繁栄していました。その違いが明確に出ましたね。」
 ――何方が優れているかなぞ分らない、俺は〈皇国〉の方が好みだ。まぁそれはこの人にいう言葉ではない、差し障りの無い範囲で話を続けよう
「〈帝国〉軍は戦において、あらゆる点で我々を凌駕しています。
戦術面に於いては、天狼会戦でそれは証明されました。
戦略面についても、〈帝国〉軍による大規模な奇襲により軍政機関である北領鎮台は軍への再編成が整わず、十全の力を発揮
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