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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十五話 参謀長との面会
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の表情は苦笑のまま動かない。
「少佐、私は鎮定軍参謀長であると同時に、いや、それ以上に騎兵将校なのだ。
処女が恋に胸を焦がす様に騎兵将校は英雄たるに胸を焦がす。
なればこそ、私はこの戦で英雄となるであろう君に面識を得たかった。
先に私の大望を実現した要訣を学びたいからね――敵であるなら尚更だ」
 純粋にそれだけを言っている様に見えた。
「参りましたね。そう言われたら勘ぐれませんよ、大佐殿。」
 なるたけ飄然とした笑みを作りながら降参する。
 ――またもや相手の方が上手かな。
 面白そうに頷きながらメレンティン大佐は再び口を開く。
「――猛獣使い、君達はそう呼ばれていた。
その指揮官が砲兵将校とはね」
「大隊の首席幕僚は猛獣使い――剣虎兵の最古参でした。彼と生き残った将校達がこの戦を成し遂げたようなものです」
新城直衛は中尉の身で剣虎兵学校の教官を務めた程の最古参剣虎兵将校である。
彼が駒城来たときからずっと剣牙虎と共に暮らしている事を豊久は知悉している。
 ――あぁそうだ、俺は彼女達の管理者だ。これを確認しなくては
「大佐殿、私の部下の剣牙虎達は正当に扱っていただいていますか?」

「あぁ、君の部下の少尉君の私物として扱っている。当然ながら、丁重に世話をさせてもらっているよ」
それを聞いて豊久は安堵した。
 ――あぁ、それは良かった、騎兵の馬と同じ扱いか。

「剣牙虎は剣虎兵達にとっては頼もしい戦友です。
少なくとも騎兵にとっての馬と同等かそれ以上に」
話が望みの方向に流れたからか、大佐が僅かに語気を強めた。
「それには腹立たしいくなる程に同意しよう、とりわけ頼もしさについてね。
しかし、兵器としては勇猛に過ぎるね、世話役まで殴り倒したそうだ」
 ――おいおい。
「それは申し訳ありません。私が部下達に会えたのならば、彼らにきつく指導しておきましょう」

「まぁいい、丁重な扱いは保証する。他に何か希望はあるかね?」
「部下達の労役に私も指揮官の義務を果たさせていただきたい。私は彼らの指揮官ですので」
「考慮しよう、だが確約は出来かねる。
何しろ鎮定軍司令官閣下が君に興味を抱いているからね。
まぁ君に興味を持っているのは私も同じだが」
ぞくり、と豊久の背に悪寒が走った。
――何やら愉しい愉しいお言葉が聞こえたのだが。
「司令官閣下、ユーリア東方辺境姫殿下ですか、殿下は確か今回が初の外征でしたね。」
――そして、初陣にケチをつけた俺に興味、か。素敵過ぎるお話だ。素敵過ぎて胃が痛い。
改めて〈大協約〉の遵守をお願いしたいよ。
「良く知っている。閣下の関心を買うだけはあるかな?」
メレンティンが面白そうに微笑する。豊久が内心では狼狽しているのを見てとったのかもしれない、。
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