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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十五話 参謀長との面会
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門が〜などといくわけがなく、他の将家閥であって、p横の繋がりは必要不可欠である。むしろそうした調整能力がない門閥意識に凝り固まった貴族将校は左遷されることが多い、これはどの五将家の何処でも同じである。
「さてさて、どうしたものかね。こうもなにもないと――向こうから来るのが世の常か」
 独り言をノックで遮られ、青年将校は溜息をついた。目覚めの残滓を追い払い〈皇国〉陸軍少佐の意識を身に纏うと、扉を開ける。
 ノックの主は、士官候補生らしい少年であった。
「自分は鎮定軍司令部付、ロトミストロフ少尉候補生であります。貴官は戦時俘虜馬堂少佐殿でしょうか?」
「私が馬堂少佐です。貴官の用件は何でしょうか?」
 相互に敬意をこめて敬礼を交わす。
「鎮定軍参謀長よりの伝言を預かっております。『ご迷惑でなければ参謀長執務室においで願いたい。』との事です」
 ――なんですと?
大慌てで弛緩して居た脳を稼働させる。
 ――何が目的だろう。剣虎兵の実態を探るつもりか?それとも皇国軍そのものか。会戦で大敗した後にあそこまでやったのだ。それこそ異常そのものだ。
 ――まぁ、考えても無駄か、 口を滑らせない様に気をつけるしかないな。
「自分は、少佐殿がお受けに頂いた場合、御案内するように命じられております。」
 ロトミストロフ君が緊張した様子で云った。
「喜んでお招きをお受けしましょう。」
今の北領の支配者達の命に逆らう筈もない、少なくとも今まで特例扱いされていたのだ、なにか思惑があるのだろう。



 元北領鎮台庁舎の参謀長執務室は、名札をそのまま〈帝国〉語にさしかえられただけであった。
 ロトミストロフ士官候補生がノックすると丁重な応答が聞こえた。
「どうぞ」
 ――少なくとも変に武張った人間ではないようだ。
 内心胸を撫で下ろし、豊久が入室すると紳士然とした壮年の人物が居た。
西方諸侯領出身であることを示す黒色の軍服を着ている〈帝国〉軍では貴族将校は出身地の軍服を着用するのでこうした時には便利なものである。
 ――西方の出身、バルクホルン大尉と同郷なのか。
「馬堂豊久少佐です。参謀長閣下のお招きにより参上しました」
「クラウス・フォン・メレンティン大佐です」
豊久は目を見張った。
 ――大佐で一個軍の参謀長? 少なくとも俺の知る限り、〈皇国〉では少将、〈帝国〉でも軍参謀長は少将から中将が任ぜられる役職だ
――東方辺境姫の引きか? だとしたら危険だな。この人が未だ若輩の〈帝国〉陸軍元ユーリア東方辺境姫を支え、一個軍を動かしていたのだ。
否、と思い直す。
――そもそも、実権を参謀長が握っていてもおかしくはない。であるならば、彼がこの戦いを演出した可能性が高いわけか。
「ドウゾヨロシク」
  参謀長・メレンティン大
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