第一章
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新説竹取物語
讃岐のみやつこという翁が竹林で見付けた赤子はすくすくと育ち何時しかこの世に二人としていない美女となった、美女は翁とその妻である老婆に育てられた。名は誰しか竹取姫と呼んだ。
その姫に求婚する者は後を絶たなかった、だが。
姫はいつもだ、哀しい顔をしてその求婚者達に言うのだった。
「折角ですか」
「どうしてもですか」
「私の願いをですか」
「応えられません」
こう言うばかりだった。
「私には」
「姫よ、それは何故じゃ?」
「どうしてなのじゃ?」
育ての親である翁と老婆はその姫に心配する顔で問うた。
「何故誰の妻にもなれぬ」
「それには訳があるのか」
「病か」
「それとも出家を考えているのか」
「病ではありません」
姫はまずは翁の問いに答えた。
「身体は何処も悪くはありません」
「左様か」
翁はそう聞いてまずは安心した、愛する娘と同じ姫がそうではないとわかって。このことはよしとしたのだ。
「それは何よりじゃ」
「そして出家もしません」
今度は老婆に答えた。
「仏門にも社にもです」
「入らぬのじゃな」
「はい」
そうだというのだ。
「どちらもです」
「それでは何故じゃ」
「何故妻になれぬというのじゃ」
「帝も是非にと申されておる」
「それでもなのか」
「私は」
姫はここでだ、その哀しみで満ちた顔で上を見上げた、そして。
そのうえでだ、翁と老婆に言うのだった。
「この国には」
「この国?」
「この国というと」
「何でもありません」
このことは言わないのだった、そして。
そのうえでだ、誰の求婚も受けず哀しい顔のままいるのだった。そしてある日のことだ、姫は二人に哀しみをさらに深くした顔でこんなことを言った。
「お父様、お母様、お話したいことがあります」
「どうしたのじゃ、一体」
「何があったのじゃ」
「私は次の満月の時に行かなければなりません」
こう二人に言うのだった。
「私がいるべき場所に」
「いるべきばしょとな」
「それは一体」
「私はこの国、本朝の者ではないのです」
二人にこのことも言った、ここで。
「他の国より来たのです」
「それは宋か遼か」
「どの国なのじゃ」
「宋でも遼でもありません」
姫は首を小さく横に振って答えた。
「どの国でも」
「では夏か」
「それとも天竺という国か」
「遥か西に大秦という国もあるという」
「そうした国なのであろうか」
「そうした国でもありません」
そうでもないというのだった、そして。
ここでまた空を見上げてだ、こう言うのだった。
「私の国は」
「まさか」
「この地にあるのではなく」
「はい、そこから来たの
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