第一章
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食べさせない理由
最上天は魚介類が好きな少女だ、それこそ焼き魚でも煮魚でも鍋でも天麩羅でもフライでも何でも食べる。そして特に。
刺身が好きだ、よく鮪やハマチの刺身を食べて喜んでいた、だがだった。
母の智恵はスーパー等で買った魚介類のそれは天に食べさせた。しかしだった。
父の孝弘が釣ってきた川魚、鯉やうぐい等はだった。
決して生で食べさせなかった、必ず火を通してだった。
食卓に出した、天は味噌汁の中の鯉を見てだ、母に不満そうに言った。
「お母さん、何で鯉はお味噌汁とかにするの?」
「川のお魚は?」
「うん、サワガミだって煮たわよね」
「ええ、そうしてるわ」
実際にとだ、智恵は眉を顰めさせて問う娘に答えた。
「この前のタニシだってそうだったでしょ」
「泥鰌もよね」
「柳川鍋にしたわよね」
「うん」
その通りだとだ、天は母に頷いて答えた。
「どうして海のお魚以外はお刺身にしてくれないの?」
「危ないからよ」
「危ないから?」
「そう、色々とね」
それでだとだ、智恵はまだ十歳の娘に答えた。
「危ないからなのよ」
「どう危ないの?」
「そのうちわかるわ。とにかくね」
「川のお魚はなの」
「危ないから」
智恵は天にあくまで言う。
「子供でも大人でも。絶対に大丈夫っていう以外は食べないから」
「そうなのね」
「そう、お母さんもね」
「お父さんもだぞ」
ここで孝弘も天に言った。
「川や池で釣った魚は絶対に生で食べないんだ」
「焼いたり煮たりして」
「こうしてお味噌汁にしたりしてな」
とにかく火を通してというのだ。
「食べているんだぞ」
「やっぱり危ないから」
「そうだ、天も気をつけるんだぞ」
「危ないってどう危ないの?」
「そのうちわかるわ」
智恵は天に真剣な顔で言った。
「だからね」
「とにかく食べたら駄目なの」
「そう、川魚とかはね」
「ううん、危ないってどう危ないの?」
天は母に言われてもまだ不満そうだった。
「私わからないけれど」
「お腹壊すなんてものじゃないの」
「死ぬの?」
「ええ、死ぬわ」
「死ぬって、そんなのじゃ」
「食べないわね」
「うん、私死にたくない」
そう言われるとだった、天もだ。
食べることを諦めた、それで言うのだった。
「じゃあいいわ」
「そう、だから諦めなさい」
「死にたくないから」
天はこう言って父が釣って来た川の魚やサワガニ等は食べなかった。そうして食べることはせずにだった。
天は成長し高校生になった、そして高校の部活は。
母がいつも魚介類を食べさせてくれてしかも料理上手だったから料理研究会に入った。そこで様々な料理を作って本も読んだ
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