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皇帝の楽しみ
第三章

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「そうした事情もありだ」
「入浴されていますか」
「そういうことだ」
「成程、ご病気のこともありますか」
「陛下も苦しんでおられる」
 その痔と便秘にだ。
「何とかされたいのだ」
「そうした事情だったとか」
「痔も便秘もならないに越したことはない」
「はい」
「しかしなってしまうとな」
「そうした治療が大事なのですね」
「入浴も然りだ」
 ダヴーはまた言った。
「これで事情がわかったな」
「はい、有り難うございます」
 将校はダヴーに敬礼をしたうえでナポレオンの事情を話してくれた彼に礼を述べた。そしてこの時もだった。
 ナポレオンは風呂に入っていた、彼は湯舟の中で緊張がほぐれている顔になって控えている者達に言った。
「蘇る気分だ、それに」
「はい、お身体が温まり」
「それで、ですね」
「後ろの方が楽になってきている」
 痔や便秘がというのだ。
「最高の気分だ」
「それは何よりです」
「ではお楽しみ下さい」
「そうさせてもらう、そしてあがればな」
 その時のことも言うナポレオンだった。
「少し眠らせてもらう」
「そして起きられて」
「そうしてまた」
「仕事だ」
 皇帝としてのそれを行うというのだ。
「そうさせてもらう」
「はい、では」
「その様に」
「しかし。どうもな」
 ここでだ、ナポレオンはリラックスしながらもだ。難しい顔にもなりこうも言った。
「私の痔、それに便秘はな」
「あまりにも重く」
「それで、ですね」
「しかも胃下垂も患っているからな」
 こちらの病気のこともあり、というのだ。
「中々だ」
「はい、眠られることもですね」
「大変ですね」
「昼と夜、それぞれ三時間程度だ」
 二度に分けてというのだ。
「眠れない」
「大変ですね」
「ご病気もそこまで重くなると」
「全くだ、何とかならないのか」
 こうも言うナポレオンだった。
「私とてもどうしようもないこともある」
「ご病気のことは」
「そのことだけは」
「皇帝であってもな」
 こうしたことはどうしようもないと言いつつだ、ナポレオンは風呂に入り続けた。今風呂にはシャンパンを入れていてその香りも楽しみながら入っていた。そうしてリラックスして身体を温めて病にも向かうのだった。


皇帝の楽しみ   完


                            2014・12・17
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