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口が悪いだけで
第三章

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「けれどあの子達はね」
「わかっていないからのう」
「御前さんから言っておくんだね」
「そうしておくか」
 こう言う秀吉だった、その水を飲みつつ。そして水を飲みながら彼はねねにこうしたことも言ったのだった。
「しかし御主と共に飲むものはな」
「酒かだね」
「水じゃ」
「それが昔のままだからだね」
「結局わしは百姓あがりじゃからな」
「それはあたしもだよ」
 尾張言葉こそ出さないが昔の口調になって話す二人だった。
「贅沢もよいが」
「こうしてありのままでいるのがね」
「気楽じゃ、結婚した時は茶なぞ飲めなかった」
「水ばかりでね」
「酒も安いものばかりじゃった」
 それがかつての秀吉だった、まさに裸一貫で太閤までなったのだ。
 それでだ、普段はというのだ。
「だからじゃ」
「それでだね」
「御主と共におる時はな」
「水だね」
「これでよいわ」
 こう言って水を飲むのだった、秀吉はねねと共にありのままの姿でいることも楽しんでいた。天下を手中に収めようとも。
 そしてだ、また三成が秀吉に厳しい歯に衣着せぬ言葉を言って来た、そしてまた清正や正則が彼に対して怒った。
「佐吉、御主はまた」
「太閤様に無礼じゃぞ」
「どうしてその様なことを言う」
「太閤様が何もされなくともじゃ」
「わし等は違うぞ」
「いい加減許さぬぞ」
 こう三成に言うのだった、そして。
 三成も彼等を見据えて対する、まさに常の状況だった。
 しかしここでだ、秀吉は。
 三成ではなく清正と正則にだ、こう言ったのだった。
「御主達、よく聞け」
「と、いいますと」
「一体」
「佐吉の言葉を聞いておるのか」
 こう二人に言ったのである。
「あの者の言葉を」
「聞いたからこそです」
「我等も怒っているのです」
 清正と正則は秀吉には礼儀正しいがそれでも三成への怒りはそのままにしていた。
「この太閤様に遠慮せぬ口」
「あまりにも無礼です」
「これまでどれだけ太閤様のお世話になったのか」
「そのことを思いますと」
「とてもです」
「言えませぬ」
「いや、それは違う」 
 秀吉はまた彼等に言った。
「佐吉がわしに言うのはわしを思っているからじゃ」
「だからですか」
「こ奴は言うのですか」
「わしも人じゃ、人は間違えるものじゃ」
 秀吉は彼等にこのことも言った。
「誰でもな、しかし佐吉はそのわしを諌めておるのじゃ」
「だからですか」
「いつもこの様にですか」
「遠慮せぬもの言いで」
「言っていますか」
「そうじゃ」
 まさにそうだというのだ。
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