明日への翼
04 RHAPSODY
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天上界。
「ユグドラシル」での仕事を終えて、螢一が「ノルンの現在の館」に戻ってきた。
新しい「研修生」のアリアが丁寧に頭を下げて出迎えてくれた。
体格は小柄で螢一より頭ひとつ小さい。胸元まであるワインレッドの髪を日本人形のようにおかっぱに切りそろえている。
「お帰りなさいませ。奥様が中の館でお待ちですよ」
礼を告げて中央の館に移る。
「ノルンの館」は四つのブロックに分かれていて、中央のブロックを取り囲むように「過去」「現在」「未来」の館がある。館といってもひとつのブロックの大きさが東京ドームぐらいあるのだ。そんな中にベルダンディー、螢一、アイリン、ウルド、アリアの五人しかいないのでは広すぎてちと寂しいのでは。とは、それは人間の感覚だろう。
ベルダンディーの波動を探って中央の館の中を急ぐ。
彼女は中央の館の中心にある大広間で螢一を待っているようだ。
「ベルダンディー」
「おかえりなさい。あなた」
立ち上がった彼女は珍しく女神服=天衣を着ていた。
そっと螢一に寄り添った。
自然に重ねる唇。
「珍しいね。仕事受けたんだ」
「ええ、アイリンも手が掛からなくなりましたし、少しずつ再開しようと思ってます」
「うん、いいことだと思うよ」
「ですが……」
「うん?」
少しはにかんでいた。
「依頼の内容はよく確かめないといけませんね」
「──あはっ」
「まったく、あの時は慌てましたよ」
口元に手をあててさも可笑しそうに笑っていた。
「螢一さんのお願いは完全なイレギュラーでしたから」
「俺もなんであのお願いをしたのかよく憶えてないんだ。ただ……自然に口から出たみたい」
二人の間でもう何度も交わされた会話であった。
女神の救済システム。幸福量保存の法則で、日常の中の幸と不幸のバランスが著しく崩れた場合、その救済措置として女神が人間のもとに光臨しひとつだけ願いを叶える。
しかし、資格審査は厳格で誰もがシステムの恩恵を受けられるわけではない。
契約者が願いを叶えるにふさわしい人物であるか。これは当然だが、大切なのは契約の内容がふさわしいか。
契約者のデーターが集まると同時にユグドラシルは対象がどんな願いをするかシュミレートをおこなう。
当然のことながら 「願いがふさわしくない」 と判断されれば女神が光臨することはない。
二つの審査に合格するとユグドラシルは次に派遣する女神の選出を行う。個人的な嗜好、女神の意思、女神の神格、女神としての力、経験、その他諸々も選考の対象になるが、このデーターはユグドラシルにバックアップされるパーソナルデーターから計算される。もちろん、一級神として登録された女神だけなのだが。
螢一の場合、ユグドラシルのシュミレートから外れたお願いをしてしまったため、ベ
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