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豹頭王異伝
薄明
非常警報
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に恩を売り、貸しを作る絶好の機会(チャンス)だ。
 グインは総ての鍵を握り、分岐の先に世界を導く《選ぶ者》。
 《一匹の豹が現れ、世界を守るであろう》と予言された男なのだからな)

(ナリス様の護衛を、カロン大導師に頼む事は構いませんね?
 命令に従い、魔道師軍団全員を連れて偵察に向かいます!
 心話で連絡を入れますから、古代機械から離れないで下さい!!)
(アルド・ナリスの名に懸け、約束は守る。
 ファーンを呼んでおくれ、古代機械も文句は言わないだろう)

 ヴァレリウスは外の魔道師達に向け、心話を飛ばし全員の念波を統合。
 灰色の眼と闇色、漆黒の瞳が瞬時交差し魔道師軍団の指揮官は退出。
 ベック公が緊急事態と聞き、畏怖の感情を懸命に抑え駆け込んで来る。

「急に呼び付けて済まない、ファーン。
 何故か不明ですが、ケイロニア軍と全く連絡が取れないのです。
 或いは新手の黒魔道を操り、奇襲が仕掛けられたのかもしれない。
 古代機械で魔道師を送り大至急、状況を確認しなければなりません。
 誠に申し訳無いが暫くの間だけ、我慢してください」

「何を言ってるんだ、私の事など構う必要は無い!
 他に何か私に出来る事があれば、何でも構わないから言って下さい。
 聖騎士団に命令し全員連れて来い、と言ってくれれば即刻クリスタルへ行く。
 貴方の思う通りにしてくれ、覚悟は出来ているよ」

「ありがとう、ファーン。
 今は此処で待機していただく事が、最も重要です。
 此の部屋に残りスカールが攫われない様に、私と一緒に見張ってください。
 相手は未知の黒魔道を操ります、不意を突いて異次元の蜘蛛が現れるかもしれない」

「わかった!
 太子は生命を賭けても救う、グル族の皆と約束を交わしたのは私だ。
 スカール殿から目を離さず、魔物の類が現れれば切り捨てる。
 それで良いのか、ナリス」

「最高の返事です、貴方は話が早くて助かりますね。
 感謝しますよ、ファーン」
 ベック公は従兄弟を護衛する役割、使命を得て精神的動揺を克服。
 ヨナは冷静に第三王位継承権者を観察、不安を拭い去る精神誘導の効果を測る。

 ヴァレリウスは魔道師軍団の指揮を執り、閉じた空間の術を起動。
 サラミス公の居城を離れ、ケイロニア軍の野営地に急ぐ。

(天幕の中に直行すれば、仕掛けられた罠に落ちるかもしれん!
 野営地の手前で、閉じた空間を出るぞ!!)
 心話が全員の脳裏に響き、イリスの光を浴びる夜景の一角に闇が渦巻いた。

 魔道師達の姿が闇の中から現れ、周囲の空気を撫でる。
 異様な気配は感知されず、異次元の怪物が召喚された痕跡も無い。

(俺1人の方が気配を消して動ける故、罠の有無を探って来る!
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