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豹頭王異伝
薄明
反撃の布石
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に介入せぬと判明した。
 現在では地上最大の魔道師とも云うべき、最も強力な魔力を行使し得る存在ではないか」
「あぁ、うぅ、気持が良い。
 いや、全然、物足りんぞ。
 偉大な魔道師グラチウス様を幾ら褒めた処で、褒め過ぎると云う事は無いのだからな。
 もっと褒めてくれ、もっと」


 異次元の扉が開いた気配を敏感に察し、グインの傍に魔道師軍団の指揮官が現れた。
 ヴァレリウスは無駄口を慎み、沈黙は金の格言に倣う。
「良い加減にせんか、グラチウス。
 貴様と掛け合い漫才、カルラアの楽しみをしている暇は無いのだぞ」
 珍しくも一瞬、闇の司祭が絶句。
 何とか体勢を立て直し、平静を繕い他人事の様に呟く。

「まぁ、当然だな。
 アモンを王が斬ってくれたおかげで、何とか閉鎖時空間から脱出できた。
 危機一髪の事態を救っていただき、誠に有難い。
 礼を言うぞ、危うく本物のミイラになる処だった」

 グラチウスは神妙な面持ちで、頭を下げる。
 首のみである事を失念、バランスを崩し無様に転倒するかと見えたが。
 其の儘、勢いを殺さず一回転し直立不動の姿勢に戻る。
 得意満面の髑髏首が歪み、ニヤリと微笑う。

「面倒な奴だ。
 いっその事その儘ミイラになってくれれば、最高の礼なのだがな」
 聞こえよがしに呟く鉄面皮の弁士、グイン。
 ヴァレリウスは肩を竦め、雄弁な溜息を吐く。
 グラチウスの唇が震え、奔流の様に言葉が溢れた。

「これこれこれ、そんな事を言うでない!
 わしが居らねば南の鷹も死に、奇蹟(ミラクル)の機会が喪われてしまうのだぞ!!
 そうじゃ、こうしてはおれぬ。
 とっくの昔に、薬が切れている筈じゃ!

 ちょっくら失礼するよ、急用があるでな。
 スカールめが、弱っておる。
 あの燃え盛るような気、生命力の波動が全く感じられん。
 放浪好きな鷹め、何処へ行きおったのだ?

 まさかと思うが、くたばってしまったのではあるまいな?
 えい、面倒な。
 奴の向かいそうな場所を、虱潰しに走査せねばならんではないか!
 暫く待っておれ、鷹に餌を与えた後に此の場へ戻って来るからな。

 ケイロニア軍2万人を叩き起こすには数ザン、かかるじゃろう。
 わしが戻るまで、クリスタルに近寄るでないぞ。
 木っ端魔道師など何百人集めた処で、物の役には立たぬ。
 豹と月と鷹を揃え、力の場とやらを作り出す他あるまい。

 北の豹、水晶の盾は既に揃っておる筈じゃな。
 闇の司祭様が鷹を連れ戻るまで、軽挙妄動するでないぞ。
 豹頭王が居れば心配は要るまい、遅れを取る事は無いだろうがな。
 わしが戻るまでしっかり見張っとれよ、ヴァレリウス。

 間違っても、アモンに、ちょっかいを出すなよ
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