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101番目の舶ィ語
第十八話。魔女の刻印《キスマーク》
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言葉のはずだ。
だけど俺はそんなものよりも重要なものを見てしまった。

女の子の涙。
これを見た男が取る行動なんて決まっている。

「俺が助ける」

その言葉を口にした瞬間、俺は不思議な感覚を感じていた。
以前、似たような言葉をこの少女に言ったような……?
そうだ。俺は彼女にもこの言葉を言っているんだ。

『何かあったら俺が守るから』

「え?」

そうだ。俺は約束したんだ。
君を守る(・・・・)って!

身体は勝手に動いていた。

「あっ……」

気づいた時には、俺はその細くて、柔らかい彼女の体を抱き締めていた。

「俺が君を助ける。多分、いや……絶対。俺はそのためにここに来たんだ」

俺が彼女の頭を自分の首元に抱き寄せると。
固くなっていた彼女の体から、力が抜けていった。

「そんな事……でも……」

「出来ない、か?」

「はい。だって私は……『神隠し』だから」

『神隠し』のロア。
きっと彼女は今までも、『神隠し』の力で何人もの人を『あちら側の世界』に連れて行ってしまったのだろう。もしかしたら、連れて行きたくない人だっていたのかもしれない。
それなのに、彼女は……『神隠し』だからという、ただそれだけの理由で、嫌々やっていたのだとしたら。
それは、とても苦しくて辛い事だ。

「認めない」

「え?」

「君が、『あー神隠し楽しい! 消してスッキリしたー!』って思っているんじゃないなら、俺は向こう側に行くわけにはいかない」

「え?」

「だってさ。毎回誰かを連れて行く度に……君は泣いているんだろう?
そして、今回は俺を連れて行って、また泣くんだろう?
なら、そんなの認めるわけにいかない!」

強く断言して彼女の身をさらに強く抱き締めた。

「……強引な……人だったんですね……」

「っと、ごめんよ。苦しいか?」

「いえ……こんなに強く誰かに抱き締められたのは初めてでしたけど……」

「ふっ、ならもっと強く抱き締めてもいいんだよ?」

「ふふっ……それは遠慮しておきます。
うん、でも、本当にありがとうございました」

少し落ち着いたのか、彼女は小さく、涙声だけど笑ってくれた。

「でも……本当にごめんなさい。私は、貴方を連れて行かないと……」

「困る事情があるんだね?」

「……はい」

それも予想していた。
誰かを連れ去る事に抵抗がある女の子が、それでもやっていた。
それは何かしらの理由があるはずだと。

「解った、ならこうしよう」

俺は彼女の体を解放すると、そのまま障子に向かって歩き出した。

「え……そっちは……」

解ってる。
この先に向かうと、俺は消えてしまうという事
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