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101番目の舶ィ語
第十七話。夢の少女の正体は……
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家出ごっこするからだろうね」

思春期の少年少女の家出。
家出ごっこ。
親や教師への軽い反発。
ちょっとグレてみた、みたいな反抗心の現れ。
俺達くらいの年齢ではよくある出来事。
だから、音央もそう思われてしまっているという事のようだ。
本当は違っていてもそれに事件性がない限り、動かないのが警察だからな。

「1週間ちょっとの行方不明では、そんなに本腰を入れないものなんだよ」

「やっぱり、そういうもんなんだな……」

世界が違えど警察という組織の本質は変わらない、という事なんだろう。

「行方不明の捜索って、時間が経てば経つほど証拠が見つけづらくなるんだけどね」

「……だろうな」

時間が経てば経つほど、証拠が見つけにくくなる。
だから最近の俺は焦っていた。
それこそ、日課だった一之江との訓練(という名の虐待)やキリカの講習をサボって探し回るくらいに。そしてそんな俺を、2人は文句を言う事もなく見守ってくれていたんだ。
だが、そんな風に見守っていてくれていたキリカがわざわざ俺の家の前で待っていた。
それも夢を見た、その日に。

「俺が『3度目』の夢を見た、って気付いたのか?」

「うん。目が覚めたら、モンジ君の存在が、気配がいつもと違って薄くなっていたからね」

「そういう事もわかるんだな、キリカは」

「モンジ君だからだよ。ほら、君ってば私の事……自分の物語にしてくれるって言ったでしょ?
だからだと思う」

「そ、そうか……恥ずかしいな、なんか」

今更だがキリカに告げた言葉を思い出して恥ずかしくなった。
あっちの俺がした事だが、こっちの俺もその事は覚えているわけで……。

「ふふっ。多分、瑞江ちゃんも気付いているんだと思うよ?」

キリカは自分だけではないよ? と一之江も気付いていると言った。
だけど、一之江はわざわざやって来ない。
______俺がピンチになったら自分を呼ぶと確信しているからか。
或いは、こういうメンタルケアはキリカに一任しているからか。
どちらも一之江の優しさと信頼の現れで……俺はなんだか嬉しくなった。

『妖精の神隠し(チェンジリング)』に取り込まれつつあるからかな。モンジ君は今、この世界での存在がとても薄くなっているの」

「ああ、皆んなの記憶からも消えてしまう、って言うヤツか」

「このまま完全に取り込まれてしまったら、きっと私達の記憶からも消えてしまうから、ちょっと心配でね」

「……悪いな、心配させて」

「ううん。会いに来てみたら、私を口説いた時みたいな目をしてるんだもん。逆に安心しちゃったよ。
『ああ、この目は誰かを助ける主人公の目だ』って」

「買いかぶりすぎだ。俺にそんな力はない」


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