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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十七話 布石の一謀、布石の一撃
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隊がどう動くかですな」
 中隊長も首肯した。
「デスネー、こちらは側道ですからそうそう大きな規模の部隊は通れません――それでも、迂回路として利用されかねない以上は警戒を疎かにもできません
相手も同じでしょう」
 西田も同意見である。

「そうなるだろうな。先遣偵察隊が来たのだから聯隊規模がこちらに派遣されている事は確実だ。
中隊同士の戦いが完勝したからと言って側道を開けるわけがない――」
 棚沢の言葉に沈黙が満ちた。葉擦れの音だけが響く。
「本部から導術通信です」
 唯一人、意識を集中して現実から意識を離していた大隊本部付導術士がその沈黙を破った。

「発 独立混成第十四聯隊本部 宛 同聯隊鉄虎大隊本部
我ラ敵部隊主力ヲ確認セリ、これより西進シ、之ヲ撃滅ス。
鉄虎大隊ハ現進路ノママ龍岡ヘト進出シ、敵情ヲ把握セヨ」

「これはまた――」

「午後第三刻までに行動を開始する、半刻後に指揮官集合をかける、各隊に達せ」
 本部の将校、下士官達が動き出す。
「貴様はここにいろ、決める事がある」
 棚沢は中隊長を呼び止め、西田に視線を向けた。
「貴様、中隊戦務だったな。悪いが中隊の面倒は貴様が見ておけ、いいな」

 西田は中隊長が頷いたのを確認し、答礼した。踵を返し、笑みを浮かべた。
「――さて、この面倒、どう読んでいるのかね、ウチの聯隊長殿は」
逃れ得ぬなら楽しむほかはない、恐らくは泉川を血潮に満たす算段を立てているであろう、彼の先達を思い出し、西田は再び笑った。



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