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入れ替わった男の、ダンジョン挑戦記
誕生、前代未聞の冒険者
第六話
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待っていただきたい。一度帰るにも、荷物や宿の事など、色々しなきゃならんのです。

「なら一緒に行こう。二人なら早く片付けられるしね。」

兄に急かされ、宿の女将さんに話をつけ、荷物を回収し、電車に揺られ気付けば実家の前。

「さあ、英司。」

兄さんがドアを開けて催促してくる。腹をくくるか。

「……ただい「馬鹿もんがぁぁ!!」ブフッ!」

親父殿に殴られた。デジャヴ?

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

殴った後でバツの悪そうな親父殿を先頭に、居間に連れられる。

母に抱き締められ、心配したと大泣きされた。ああ、相変わらず美形になったわが親兄弟。僕の平凡さが際立つ。顔面高偏差値に比較され続けたのも此方の僕の入れ替わりの一因じゃないか?

それ以上に僕の胸中がざわめく。寂しさと…、後悔、だろうか?経験のない感情に戸惑いながらも、今は家族と向き合う。

「英司がダンジョンに挑んでいるのは、知ったよ。まさか本気だとは思わなかったんだ。」
「アーティファクトの事を話さなかったのは、悪いとは思ってるよ。だけど、定時制じゃあ納得しなかったでしょ?」

脳裏に過る、優秀な兄みたいになれと重圧をかける親父殿、無責任に期待する兄や母、努力して、見向きもされない結果。

此方の僕の残滓が心の中で叫ぶ、苦い記憶。

「僕は僕なりに精一杯やった。でも何も返ってこなかった。あったのは『この程度か』の失望と溜め息だけ。正直、息が詰まりそうだった。」

僕の口から紡がれる、残滓の嘆き。止める気はない、つもりもない。

「欲しかったのは、『頑張ったな』、の一言だったんだ。結果じゃなくて、過程を見てほしかった。」

家族は黙って僕の嘆きを聴く。子供には立派になってほしいと願う親の気持ち、なってくれると信じる信頼、それが行き過ぎればどうなるかと、当事者の僕が他人事のように喋っていた。

「言いたい事はわかる、英司。だがお前には才能が有るんだ。磨かなくてどうする。」

僕の恨み節に瞑目したまま、親父殿が諭してくる。才能を磨け、高みに登れ、親が子に言う常套句だが、それで『僕』は追い込まれたのだ。

「えー君、お母さんはえー君が居てくれれば、それでいいよ?」

無垢に、純粋に母は言ってくれているのだろう。その純粋さが、『僕』の重荷になった。

「兎に角、もう一度考えよう、英司。ダンジョンは危険だ。いつ何が起きるか分からないのだから。」

そして兄。『僕』最大のコンプレックスかつ、挫折の根源。何をさせても完璧な兄に、周囲は大いに称賛し、『僕』と比べた。万能の和樹、凡庸の英司。残滓に強く強く刻み込まれた、覆せない事実。

それらと諸々が合わさって、『僕』は嫌気がさしたのかもしれない。ともすれば、別の要因もあるのだ
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