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入れ替わった男の、ダンジョン挑戦記
誕生、前代未聞の冒険者
第五話
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怪盗 ラッツ 】

…………誰?怪盗ラッツって。

「最近世間を賑わしている泥棒だね。兎の耳と、猫の耳のカチューシャを着けた、可愛らしい衣装の女の子二人組って客が騒いでたよ。」

ラッツって、『ドブネズミ』だろうに。兎と猫って。

「最初は、『ラビットキャッツ』で活動していたらしいね。長ったらしいから略したとか聞くね。」

随分と豪快な略称である。獣娘とでも呼ぶとしよう。

「それで、坊やの手に入れたネックレスが狙われているのかい?不運だねえ…。坊やは悪さしていないのに…。」

女将さん曰く、獣娘が盗むのは、私利私欲で私腹を肥やす悪党や、弱者を虐げる卑怯者を懲らしめるためらしい。

…あながち否定しきれないな。弱者をモンスターに置き換えると。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

まあ、ネックレスをもて余していたので、引き取ってくれるなら都合が良いと、気分よくダンジョン入り口に今日も向かう。

受付では、もう話が広がっているのか、冒険者達が集まって話している。 おや、テレビカメラが。マスコミが取材に来ているのですか?

「あ、来ました!冒険者達から、ヨーンと呼び親しまれている若き俊英、楠英司君です!」

マイクを手にしたスーツのお兄さんがカメラに熱く語っている。そのカメラが、僕に向く。取材対象、僕?

「今回、怪盗ラッツから予告状が来たとの事で、一言、お願いします!」

お兄さんがマイクを向けてきた。一言、と言われてもねぇ…。

「じゃあ、ダンジョンの三十階で待ってますと。」
「それは、怪盗ラッツを邪魔の入らない場所で待ち受けると!」

まあ、そうなる。早めにボスをお掃除して、後腐れなく済ませたいし。

「では、では最後に怪盗ラッツに予告状の返事を!」

なんでみんな僕を見ているんだ?そしてお兄さんが興奮気味なんだ?まあ、予告状に対する僕なりの返事を口にする。

「逃げも隠れもしないんで、きっちり来てね。でいい?」
「ありがとうございます!それでは、頑張ってください!」

お兄さんに促され、受付を通ってダンジョンに入る。何だったんだ?あのやり取り。

だが、英司の態度は他人にはこう聞こえた。

『風竜の泪』はあげない。三十階で待っててあげるから、逃げずにおいで。返り討ちにしてやる、と。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

首尾よく三十階まで到着し、手早くボスを片付けて、件の獣娘を待つ。

手持ち無沙汰なので、狙われたネックレスを改めて見る。綺麗な翠色をしている。これを手にして目をつけられるとは。

ぼんやりネックレスを眺めていると、明るいはずのボスの間に闇が落ちた。文字通りお先真っ暗である。

『この世の悪を見逃さず!』
『理不尽に泣く人々を
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