誕生、前代未聞の冒険者
第五話
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
怪盗 ラッツ 】
…………誰?怪盗ラッツって。
「最近世間を賑わしている泥棒だね。兎の耳と、猫の耳のカチューシャを着けた、可愛らしい衣装の女の子二人組って客が騒いでたよ。」
ラッツって、『ドブネズミ』だろうに。兎と猫って。
「最初は、『ラビットキャッツ』で活動していたらしいね。長ったらしいから略したとか聞くね。」
随分と豪快な略称である。獣娘とでも呼ぶとしよう。
「それで、坊やの手に入れたネックレスが狙われているのかい?不運だねえ…。坊やは悪さしていないのに…。」
女将さん曰く、獣娘が盗むのは、私利私欲で私腹を肥やす悪党や、弱者を虐げる卑怯者を懲らしめるためらしい。
…あながち否定しきれないな。弱者をモンスターに置き換えると。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
まあ、ネックレスをもて余していたので、引き取ってくれるなら都合が良いと、気分よくダンジョン入り口に今日も向かう。
受付では、もう話が広がっているのか、冒険者達が集まって話している。 おや、テレビカメラが。マスコミが取材に来ているのですか?
「あ、来ました!冒険者達から、ヨーンと呼び親しまれている若き俊英、楠英司君です!」
マイクを手にしたスーツのお兄さんがカメラに熱く語っている。そのカメラが、僕に向く。取材対象、僕?
「今回、怪盗ラッツから予告状が来たとの事で、一言、お願いします!」
お兄さんがマイクを向けてきた。一言、と言われてもねぇ…。
「じゃあ、ダンジョンの三十階で待ってますと。」
「それは、怪盗ラッツを邪魔の入らない場所で待ち受けると!」
まあ、そうなる。早めにボスをお掃除して、後腐れなく済ませたいし。
「では、では最後に怪盗ラッツに予告状の返事を!」
なんでみんな僕を見ているんだ?そしてお兄さんが興奮気味なんだ?まあ、予告状に対する僕なりの返事を口にする。
「逃げも隠れもしないんで、きっちり来てね。でいい?」
「ありがとうございます!それでは、頑張ってください!」
お兄さんに促され、受付を通ってダンジョンに入る。何だったんだ?あのやり取り。
だが、英司の態度は他人にはこう聞こえた。
『風竜の泪』はあげない。三十階で待っててあげるから、逃げずにおいで。返り討ちにしてやる、と。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
首尾よく三十階まで到着し、手早くボスを片付けて、件の獣娘を待つ。
手持ち無沙汰なので、狙われたネックレスを改めて見る。綺麗な翠色をしている。これを手にして目をつけられるとは。
ぼんやりネックレスを眺めていると、明るいはずのボスの間に闇が落ちた。文字通りお先真っ暗である。
『この世の悪を見逃さず!』
『理不尽に泣く人々を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ