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星になった女神
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第一章

                      星になった女神
 かつてアステカにコヨルショウキという女神がいた。
 豊穣の女神であり頭には蛇の血で染められた鷲の羽根の冠があり耳には魔法の鈴がある。そうしていつもトウモロコシを見ていた。
 その彼女であるが潔癖症であり生真面目な性格であった。何に対しても厳しくとりわけ男女関係といったものについてはだ。かなり厳しかった。
 それは誰に対しても同じでだ。母であるコアトリクエにもよく言っていた。
「男女関係はしっかりしないといけません」
「いつもそう言うわね」
「当然です。夫は一人、妻は一人」
 こう言うのである。強い口調でだ。
「そして相手がはっきりとしないとです」
「駄目なのね」
「そうです、父や母のわかっていない子なぞです」
 言葉はさらに過激なものになる。そしてであった。
 こう言い切るのだった。
「存在してはいけません」
「それはどうしてもなのね」
「はい、どうしてもです」 
 険しい顔で語る。
「おわかりでしょうか」
「あまり。そういうことは」
 しかしであった。ここでその母神は言うのであった。
「言わない方がいいのではないかしら」
「いえ、言います」
 コヨルショウキの言葉は変わらない。
「何があろうともです」
「そうなのね」
「若しそういう神がいれば」
 また話す彼女だった。
「私が存在自体を許しません」
「倒すというのね」
「そうします。誰であっても」
 こう話してでった。彼女は己の頑迷とまで言える強い主張をするのだった。しかしであった。ここでそのコアトリクエがであった。
 妊娠したのだ。そしてその相手はだ。
「わからないというのね」
「はい」
「そうです」
 コヨルショウキに彼女の弟神や妹神達が答える。彼女には四百の弟や妹達がいるのだ。
「今度の子はです」
「全くわかりません」
「そうなの、わかったわ」
「それで姉上」
「どうされますか?」
 弟妹神達が彼女に問うた。
「それで」
「これは」
「決まっているわ」
 コヨルショウキは険しい顔で彼等に述べる。
「止めさせるわ」
「母上をですか」
「そうされると」
「ええ、お母様には悪いけれど」
 母を気遣いはする。そうした意味で彼女も娘であった。しかしそれ以上にだ。その正義感と潔癖が彼女を動かしているのであった。
「その子を産むのはね」
「止めて頂く」
「左様ですか」
「そうですか、それでは」
「今より」
「行くわよ」
 こう言ってであった。彼女はその四百柱の弟神や妹神を引き連れてそのうえで母の下へ向かう。その手にはそれぞれ武器もあった。
「母上!おられますね!」
 母がいるコアテベックの山に来た。その麓での言葉だった。
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