二話:料理とジュエルシード
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ことを話すアルフの目には明らかに憎悪の色が浮かんでいた。彼はその事に目聡く気づいたが、そのことには特に何も言わずにしっかりとした物を食べる様にフェイトを説得しただけである。
初めはかなり渋っていたフェイトではあるがヴィクトルも伊達に一児の父親をやってきたわけではない。素早くアルフを味方につけ心配だから食べてくれと悲しそうな顔で、二人で頼み込み、止めに自分が作った料理を全員の前に出し、フェイトが食べるまでは自分達も食べないというフェイトの優しさを利用する様な手を使って、ようやくフェイトにしっかりとした食事を摂らせることに成功したのだ。
フェイトの母親に思う事がないわけではないが、一緒に暮らしていないことや、連絡も殆どとらないことから、何か訳ありなのだろうと深く追求することはしなかった。何より、娘を平然と利用した自分が他人に対して説教のようなことを言えるはずもないと自嘲していたからである。
「ヴィクトルさん…私達は食べ終わったら出かけますね」
「ん? ああ、気をつけて行ってきなさい」
「…はい」
出かけると言うフェイトにヴィクトルは優しげな笑みを浮かべてそう答える。その言葉が嬉しかったのかフェイトはニコリと笑う。そして、一番食べるのが遅かったフェイトが食べ終わった所でヴィクトルは三人分の食器を下げ、皿を洗い始める。その光景はさながら主夫といった感じで日常の穏やかさを醸し出していた。そんな中、この家の主である二人の女性は密かに念話―――魔力によって自分以外の相手と交信する魔法によって話し合っていた。
(…“ジュエルシード”が見つかったんだよね?)
(ああ、夜の間にあれだけ探したんだから間違いないさ)
(そうだね……がんばろう、アルフ)
(昼までに片づけて、ご飯食べに帰ってくるよ!)
(ふふふ……うん)
そんな会話を終えた彼女達は力強く立ち上がり、玄関へと向かっていく。その様子に気づいたヴィクトルは綺麗に拭き終わった皿を食器棚にしまい。二人を見送りに玄関へと自分も歩いていく。
「余り危ないことはしないように。いってらっしゃい」
「い、いってきます」
「ああ」
何も聞かずに暖かな表情で見送ってくれるヴィクトルに対して何か自分達が嘘をついているような気がしたフェイトは胸に少しばかりに罪悪感を抱きながら返事を返し、アルフは彼の作る料理により餌付けされてしまったのか、かなり彼を気に入っており上機嫌で返事をして意気揚々と外に出て行く。ヴィクトルはそんな二人をしばらく手を振りながら見送った後、その暖かな表情を一変させ冷たい無表情へと変える。
「さて……今日こそは何をしているのかを確かめさせてもらおう」
そう呟いた瞬間、彼の姿は消え去っていた
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