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ワンピース〜ただ側で〜
おまけ10話『背中』
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……まるで父親。

 一言で表すなら、それこそ師弟という関係で終わってしまう俺とその人との関係性。けど、俺にとってはそんな一言では表せない関係性なその人。

 その人の背中に憧れて、その人の強さに憧れて、その人の生き方に憧れて。
 俺はナミを守るために強くなった。それだけは譲れないし、これからも譲るつもりはない。けれど、俺はこの人に憧れて強くなった。それも絶対的な事実だ。

 ナミたちを救うため一度師匠と離れて、アーロンをブッ飛ばした。
 ルフィたちと出会った。
 様々な旅路で、俺は自分の弱さに晒されてきた。

 絶望的な状況で、仲間に頼る……ならばまだ良かったのに、そうじゃない。仲間にすがってしまったリトルガーデン。
 腹を割られて、その痛みに負けてしまったアラバスタ王国。
 ゴロゴロの実の能力者に、結局はルフィにバトンを渡してしまった空島。
 海軍の英雄ガープに完敗してしまったウォーターセブン。

 道中で、俺は負けてばっかりだった。
 けど、だからこそ、俺はこの戦場で赤犬をブッ飛ばすことができたと思ってる。
 ……また負けたけど、ガープに渾身の一撃を与えることができたと思ってる。

 ――ん?

 また負けた?
 自分でそう思っておいてなんだけど、納得がいかない。

 ――負けてない。

 そうだ、俺はまだ負けてない。
 体に力が入らない。
 今にも寝てしまいたい。
 辛い。
 しんどい。
 けど、まだだ。

 だって俺はまだ――

「……おやじぃ〜〜!!」

 誰かが泣いているかのようにすら聞こえる、悲痛な声。
 どこかで聞いたことがある気がする。 
 そう思って、考えるまでもなく思い当った。

 誰かが大切な何かを失おうとしているときと同じ。
 ベルメールさんをアーロンに殺されかけたときにナミやノジコ、それに俺が出していた声と、きっと似ている声色だ。
 そう思った時には目が開いていた。

「――戦える」

 いつの間にか、立ち上がっていた。
 ガープの姿を探す。

「っハント!?」 

 エースの声……だろうか? 耳鳴りがひどくてよく聞こえない。
 エースには悪いけど、今は振り向いている時間すら、体力すらも惜しい。
 さっさとガープを倒して白ひげさんを連れてここから逃げるんだ。
 俺はそれをすると決めたんだから。

 ――それなのに。

「うぉ! まだ生きてやがる、こいつら!」

 ……黒ひげ?

 ――なんでお前が俺の前にいる。

「……邪魔だ」
「……あ?」
「魚真空手! 演武!」

 ガープとの決着の邪魔をするな。
 白ひげさんが生きることへの邪魔をするな。
 師匠の大切な人の邪魔をするな。


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