暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
おまけ9話『壁に潜んだ黒い影』
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ントから感じ取っている。

 加えて、それはまだ映像電伝虫が無事に動いていた少し前。
 赤犬という大将の一角をハントが打ち破る姿を映像電伝虫が全世界へと伝えていた。大将は海軍にとって象徴的存在。しかも、破ったのは白ひげや白ひげ隊の隊長たちでもなく、まだ世界的に影響力などないたった一人のルーキー海賊。これは海軍の沽券に関わることだ。
 そのハントを逃がすことは、海軍として絶対にできない。

「……しかし、サカズキの小僧が動けんくなるのも頷けるわい」

 腹をさすり、一撃で気を失い戦線離脱した赤犬のことを思い出しつつもチラリと赤犬が気を失っている方向へと視線を送り「さすがに、そろそろ目を覚ましそうかのう?」と小さな声で呟き、それと同時に拳を固める。

「……」

 おそらくは体が痛むのであろう。しかめっ面で、ゆっくりとした呼吸を数度繰り返し、そこからの動きは速かった。

「オイ……あれ……何だ、ありゃあ」
「本部要塞の影に何かいるぞぉ!」

 外から聞こえてくる海兵たちの声すらもほとんど気に留めず、拳を振り上げ、ハントめがけてそのこぶしを振り下ろし――

「あ、見つかっつった」
「む!?」

 ――止まった。

 ハントに直撃するまであと僅か、というところでガープの拳が止まった。
 滅多なことでは動じないはずのガープの拳が、だ。つまり、外から聞こえてきたその声が、ガープにとってそれほどのものだったということだ。

「……サンファン・ウルフか!」

 人の身でありながら本部要塞ほどに巨大なその人物は海賊『巨大戦艦サンファン・ウルフ』間違いなくインペルダウンレベル6に収容されていたはずの死刑囚だ。
 そんな、今もなお収容されているはずの男が、なぜここに。
 海兵ならば誰もがそれを思ったことだろう。現に動揺が海兵たちにも広がっている。

 それこそガープを含めた海兵はもちろん、海賊たちもがその巨大な姿を見上げて驚きに身を任せていた中、ただ一人。それを理解もせずに、気づきもせずに、己の為すことを成そうとしている人物が。

 それはまさに、いつの間にか。

「魚真空手――」

 いつの間に立ち上がっていたのか。
 ガープの懐に拳を構えたハントがそこに。

「なん!?」

 ガープが慌てて防御をとろうとするが、さすがに致命的な隙を見逃すほどにハントは甘くない。
 既に瀕死に近いだとか、目も開いているかどうかすら怪しいだとか、口元からこぼれる血で足元が池になっているとか、そんなものは今のハントに関係がなかった。
 つまり、もう遅い。

「――正拳」

 もはやそれは何枚瓦なのか、彼自身理解していない。
 持ちうるすべての力を振り絞って、ただ拳を繰り出した。
 さすがのガープ
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