おまけ8話『新たなる火が灯る日』
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俺を生んでくれた両親を、ふと思い出していた。
面白い父さんとやさしい母さん。
今でも父さんと母さんが死んでしまった原因は知らない。俺を拾ってくれた母さん、ベルメールさんにその時のことを今でも聞けてないからだ。
ベルメールさんに育ててもらって、俺は幸せだった自信がある。
暖かい母親と騒がしくも楽しい姉妹。それにまるで父親みたいに接してくれていたゲンさんだっていたし、村のみんなも俺やノジコやナミのことをまるで本当の家族のように扱ってくれたし、不満に思ったことなんて一度だってない。
けれど、たまに思うことがある。
俺を生んでくれた父さんと母さんは今、俺をどんな風に思っているんだろうか……って。
もう顔も覚えていない、声も覚えてはいない。けれど確かに俺という命をこの世界に産み落とし、そして命の危機から俺を救ってくれた二人。俺が覚えているのは最後に手を握ってくれた母さんの手の優しさと体を抱きしめてくれた父さんの力強さだけだけど。
今では俺にとっての母親はベルメールさんで、父親というならばゲンさんとか師匠が浮かぶ。けど、いや、多分当たり前にそれでも。俺は実の両親に対しての感謝を忘れたことは無い。
今でもこびりついている父さんと母さんの最期。己が命を惜しまずに、俺を助けてくれた彼らの背中。
その背中はいったい何を思っていたのだろう。
最後まで俺のことを考えてくれてたってことはわかる。
けど、いったいどういう気持ちで二人は命を落としてしまったんだろうって、今でも思うことがある。
面白かった父さんを誇りに思う気持ちはまだ俺の胸の中に残っている。
優しかった母さんが好きだったという気持ちはまだ俺の胸の中に残っている。
俺は二人のおかげで今を生きてる。
俺は二人を犠牲に、今を生きてる。
だから、なのかもしれない。
子供のころ、アーロンに島を襲われた時のこと。ベルメールさんという母親が死ぬぐらいならまだ俺が死んだほうがマシだって思えたのは。結果的に俺は死ななかったけど、まぁそれはともかく。
多分、いや、もしかしたらだけど。
俺は誰かが犠牲になることが嫌いなんだろうって思う……ん? いや犠牲になる人がいることを好きなんて人はいないか……うん、普通はいないか、何を考えてたんだ? 俺は。
少しだけ笑いそうになって、それでもまた過去を思い出す。
アーロンにベルメールさんを殺されそうになった時。
ラブーンの仲間が50年も帰ってきていないという話を聞いた時。
アラバスタを出る時、黒檻のヒナの艦隊からの攻撃に対してボンちゃんが犠牲になってくれようとした時。
空島で、ナミがエネルに攻撃されて危なかった時。
ロングリングロング
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