暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
おまけ7話『真なる力』
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止めた。

「?」

 ジンベエもエースも、その露骨な赤犬の異変に気づき首を傾げて動きを止めるが、すぐにハッとした。ジンベエとエースが知る魚人空手陸式が本当の力が発揮されるのはここからだからだ。

 魚真空手の真髄はぶつかりあってから。
 それは魚人空手陸式の時と変わりはない。

「……」 

 体を動かすことそのものに危機感を覚えて動きを止めた赤犬だが、それでも体を動かさないと何かをすることもできない。改めてハントへととどめを刺そうと拳を振り上げた、その瞬間だった。

 赤犬に襲い掛かる爆発的な衝撃。いや、魚人空手陸式から魚真空手へと昇華されたそれはもはや爆発的などという表現すらも生ぬるい。
 更に、魚真空手により発動されたその楓頼棒は完全に完成されたそれ。
 威力はまるで別のそれであるかのように桁違いに強い。

「っ゛!?」

 赤犬を包む大気が爆発。それが赤犬の体内の水分を爆発させることへと連動。ハントとぶつかりあったのは右腕だけのはずだったが、その衝撃は完全に全身へと伝わっていく。

 まるで右腕が急に粉みじんになったかのような感覚が赤犬を襲い、かと思えば全身へとその感覚が幾重にも広がっていく。
 体中を砕いて、微塵になるまで爆発させる。
 それを何度も繰り返したものを一度にまとめて発揮させたかのような衝撃。 

「……っっがっ゛!?」

 ふと、高い上空へと赤犬が吹き飛ばされて、大量の血を吐き出した。いや、漏れた血は口からだけではない。全身からも、まるで穴という穴すべてから噴出させたかのように大量の血が迸り、そのまま空中からハントの目の前へと落下。

 地面に激突した。

「……」

 それで終了。

「…………」

 動かない。

「………………」

 本当に動かない。

「……………………」

 ピクリとも動かない赤犬のあまりにも呆気ない幕切れに、海軍も白ひげ一味も声を失う。戦場ではありえないほどに粛々とした空気が流れたとき、ふと誰かの声が静かな戦場に響く。

「誰もやらせない……俺がっ…………守る、絶対にだ!」

 全身を覆う痛みと疲労感に顔をしかめ、息をたえだえにしながらもいつの間にか立ち上がっていたハントが吐き捨てた声だった。

 その言葉は決して大きい声ではない。肩から息をしていることからも声量はむしろ小さかっただろう。だが、あまりにも静かだった戦場ではどこの誰のどんな音よりも強く響く。

 その声を皮切りに白ひげ一味が騒ぎだてる。

「ハントが赤犬に勝ったぞぉぉぉぉ!」
「やった! ハントがやったぞ!」
「すげぇぞ、ハント!」
「海軍最高戦力の一人を、たった一人で倒しちまいやがった!」
「おっしゃぁぁぁぁぁぁ!」

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