2部分:第二章
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第二章
大学に入っても高校の時の彼氏と同じ大学に通っていた。この彼氏は三木隆盛という。おさまりの悪い茶髪に太い眉の童顔の青年で背は彼女より少し大きい位である。彼女に負けない位明るく活発でいつも大飯を喰らいアルバイトに精を出していた。
「それで昨日よ」
「昨日のバイトはどうだったの?」
「かなり遅くなってよ」
こう彼女に語るのだった。
「もうな。十二時までかかったんだよ」
「また随分遅くかかったのね」
「けれどそれだけバイト料は弾むってさ」
明るい声で彼女に話す。
「その介があったってもんだぜ」
「よかったじゃない」
双葉は彼の言葉を聞いて笑顔になった。
「じゃあ今度のバイト料は」
「かなり期待できるぜ」
また笑顔で話す。
「さて、それで何処に行こうかな」
「またあそこ?豚カツ屋の」
「ああ、それいいな」
彼女の言葉に応えて言う。
「あそこで腹一杯な。食うってのもな」
「やれやれ、隆盛は相変わらず食い気ばかりね」
こうは言うがその大きな目は微笑んでいる。温かい目である。
「高校の時から」
「何だよ、悪いのかよ」
「別に」
その温かい目のまま述べる。
「悪くはないわ。むしろいい位よ」
「だろ?大食漢なのが俺のいいところさ」
自分で言う隆盛だった。
「だからよ。ここはジャンボカツ丼をどかんとな」
「あれだったら今でも食べられるじゃないの?」
「違うんだよ。カツ丼ってのはよ、バイト料が入ったその時にこそよ」
「食べるものだっていうのね」
「そうだよ。だから頼むぜ」
満面の笑顔での言葉だった。
「金が入ったらな。御前も行くだろ?」
「そうね」
双葉もまんざらではない顔だった。
「私も。行こうかしら」
「豚カツ好きな奴に悪い奴はいねえよ」
根拠のない言葉だった。
「だからよ。行こうぜ」
「ええ。それにしても」
話が一段落したところで双葉は少し残念そうな顔になった。そしてその顔で言うのだった。
「最近ね。ちょっとね」
「ちょっと?何なんだよ」
「雨。降らないわね」
こう言うのだった。
「最近。困ったことね」
「ああ、それは仕方ないだろ」
彼はそれは仕方ないと言うのだった。カツ丼の話をする時とはうって変わって冷静な顔になっている。
「それはよ」
「仕方ないって?」
「今何月だと思ってるんだよ」
彼は月日を話に出してきた。
「八月だぜ」
「それはわかってるわよ」
このことを双葉も知らない筈がなかった。
「それはね」
「八月って夕立とか以外には雨降らないからな」
「あと台風ね」
「まあ夕立なんてすぐだしな」
隆盛は夕立についてすぐに駄目出しをした。
「だからよ。雨がないってのもな」
「当然だっていうのね」
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