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アテネとメデューサ
6部分:第六章

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第六章

「アテナ様がですか?」
「はい、そうです」
 梟はメデューサに恭しく答えた。
「是非にと言われまして」
「そうなのですか」
「それで。宜しいですよね」
 手紙を手渡したうえで尋ねる。
「そこに何が書かれているのかはわかりませんが」
「え、ええ」
 メデューサはその可愛らしい顔に戸惑いを見せながら答えた。
「アテナ様さえ宜しければ」
「はあ」
 梟はそれを聞いて一体何が書かれていたのか気にはなったがやはりそれについては尋ねはしなかった。従者としての分を守っていたのだ。
「喜んでお受けするとお伝え下さい」
「ではそれで宜しいですね」
「はい」
 梟の言葉にも頷く。
「アテナ様に宜しくと」
「それでは」
 梟はその言葉を受けてメデューサの下から去った。そしてそのままアテナのところへと戻りメデューサの話を伝えるのであった。
「そうなの」
 アテナはまだ部屋に閉じ篭っていた。部屋の中で梟からメデューサの返事を聞いたのだ。
「よかったわ」
「といいますと?」
「いえ、何でもないわ」
 一瞬だけ微かに笑っていたがそれはすぐに消えてしまった。
「とにかくわかったから」
「はあ」
「お疲れ様」
「私の仕事はこれで終わりですか?」
「そうよ。これは御褒美」
 その手にオリーブを出して梟に与えた。アテナのオリーブはまた特別なもので普通のオリーブよりもかぐわしく、そして油も美しいのである。
「これをあげるわ」
「有り難うございます」
 梟はオリーブを受け取ると嬉しそうに頭を垂れた。それから機嫌よくアテナの側を後にする。その途中飛びながら考えに耽っていた。
「それにしても」
 彼は思う。
「一体何なのだろう」
 この話が気になるのだ。
「アテナ様も思わせぶりだしメデューサ様の御様子も」
 何か引っ掛かる。頭のいい彼はそれに気付いていたのだ。だが。
「まああれこれ詮索するのは止めておくか」
 彼は従者である。やはり従者が主に疑問を持つのはよくないことだ。ましてや彼の主は神、しかも知恵の女神である。そうした存在に疑問を持つのはやはりまずいのだ。

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