5部分:第五章
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第五章
「さっきも言いましたが」
「わかりました」
その言葉を確かめてから頷いた。
「ではメデューサ様に相応しい方が現われますように」
「ありがとう。じゃあ」
「はい、これで」
何とか正体を明かさないまま話を終えて神殿を去った。神殿に出るとアテナはまずほっと胸を撫で下ろした。
「危なかったわ」
少女の姿のまま呟く。
「もう少しで変身がとけるところだったわ」
「一体どうしたんですか、あんなに驚かれて」
「何でもないわよ」
変身を解き本来の姿になって答える。
「何でもないって」
「だから何でもないわ。気にしないで」
「アテナ様がそう仰るのならいいですけど」
釈然としないが彼女がそう言うのなら従者としてはもう言うことがなかった。
「戻るわよ」
アテナは間髪入れずそう言った。
「もうですか!?」
「彼女のことはわかったから。もうここには用はないわ」
「わかりました。それじゃあ」
「ええ、オリンポスへね」
アテナと従者はすぐにオリンポスに戻った。戻ってから彼女は暫くの間自分の宮殿の中に閉じ篭り外に出ようとはしなかった。
そして外から見える虹と自分の宮殿の至るところにあるオリーブを交互に眺めていた。眺めながら思索に耽っていたのである。どうにも落ち着かない様子で。
そうした日々が暫く続き。ある日彼女は梟を自分の部屋に呼び寄せた。
「どう為されました?」
彼は彼なりに部屋に入ったままの主人を心配していた。
「近頃どうも」
「これを」
梟の言葉を遮るようにしてオリーブの木の皮をであった。
「これは」
「メデューサに送って」
それは手紙だった。文字が書かれていた。だが梟はそれには目を通さなかった。礼を守ったのである。
「いいわね」
「メデューサ様にですね」
「ええ」
よしと言った。彼はそれを受けてその木の皮を嘴で受け取った。
「それでは」
その次に足に持って飛び立つ。そんな彼にアテナは心配そうに声をかけた。
「きっと届けてね」
「はい」
何が何なのかよくわからないまま頷く。挨拶を終えて梟はメデューサのところに向かうのであった。
それをメデューサに届ける。手紙を見た彼女は怪訝そうな顔をしていた。
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