4部分:第四章
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第四章
その中には様々な感情がある。嫉妬もまたある。だがそれだけではなかった。彼女はその他のものに誘われてここに来たのだがそれには気付いていなかった。嫉妬だけには気付いていたが。それを押さえ込もうとして他の感情には気付いていなかったのである。むしろ嫉妬よりもそちらが大きくなっていたのにである。
「ここに住む娘でございます」
アテナは身分を偽ってこう述べた。
「メデューサ様に御会いしたくてこちらに参りました」
一礼して恭しく言う。
「私にですか」
「はい」
少女の声で答える。
「お美しいと御聞きしまして」
「私は別にそんな」
今目の前にいる少女が誰なのか気付いてはいない。只の人間の少女だと思っていた。だが。メデューサは相手が人間であっても決して驕ってはいなかった。純真な少女のままであった。
「そんなに美しくは」
「その髪の毛は」
「この髪の毛もまた」
彼女は言った。
「母であるガイア神からの贈りものですから」
「そうなのですか」
「はい。ですから私は別に」
アテナは話し掛けながらメデューサの心を見極めていた。どうにも偽りではないようであった。
「自慢するということはありません」
「しかし美しさは」
「この世には美しさよりも大事なことがありますから」
「それは」
「心ではないでしょうか」
彼女は言った。
「どれだけ美しくても心が醜ければ。何にもなりません」
「はあ」
これはアテナにとっては中々こたえた言葉であった。実は今彼女は嫉妬という醜い心を抱いていたからである。それを思うとどうにも聞き逃せない言葉であった。
「私は。心を大切にしたいのです」
「では自慢されることは」
「だからしたくはないのです。静かに、穏やかに」
「過ごされたいのですね」
「誰かを好きにもなりたいですけれどね」
「えっ」
この言葉は全く予想してはいなかった。驚きのあまり本来の姿を出しそうになる。
「どうしたました?」
「えっ、いえ」
慌ててその場を取り繕う。
「何でもありません」
「そうですか」
「誰かを好きに、ですか」
「男の方でも女の方でも」
「女の方でも」
「はい」
当時のギリシアにおいては同性愛は普通のことであった。あの女好きで有名なゼウスも美少年を側に置いていたことで知られている。神々もまた異性だけではなく同性も愛していたのだ。
「それは。やはり無理ですかね」
「はあ」
何故か自分自身に言われている気がした。
「是非にと思うのですが」
「それもやはり縁ではないでしょうか」
アテナはそうメデューサに述べた。
「縁があれば」
「それだといいのですけど」
何か物憂げになる。その顔もまたいいものだった。
「けれど。誰もいませんから」
「女の人
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