相似で相違な鏡合わせ
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したらダメよ。私は彼らのような英雄にはなれないだけ。ふふ、だって私が為るのは、大陸に平穏を齎す覇王だものね」
ただ、此処で気付けるのも華琳で、ギリギリの所で桂花に気付かせないのも彼女。
示すのは、彼らのように命を賭けないというわけではなく、必ず己が描く世界を作り出すということ。
自分の為で、自分の為ではない。矛盾した事柄は彼と同じ。裏側を覗けば華琳の本心を覗けるが、桂花には読み取る事は出来なかった。
――満たされない。秋斗は面白いけど、やはり私はあなたも欲しいのよ、黒麒麟。
内心で舌打ちをしつつ、桂花とまた少しだけ会話をしながら仕事の手を進めて行く。店長の店に遣いを指示したり、街の改善案件を勧めたりと並列思考で事案を処理しながら。
窓から差し込む日輪の光に、自分が照らせない男と、照らせなかった男を思い浮かべる。
桂花にこんな“弱さ”を見せそうになったのは、きっと秋斗と黒麒麟に……子供のような憧憬と自己投影を向けていたからだと理解した。
孤独なのに孤独ではないその居場所。間違いを叱ってくれる人に囲まれた暖かい居場所。なのにその男は一人になろうとする……まるで今の自分を見ているかのよう。
大きな部分が似ていた。だから余計に彼女は黒麒麟を欲した。その在り方が、自身と彼の二人共が正しいと証明する為に。
だからだろう。桂花に自分の本心を言ってしまいそうになった。
これまでなら抑え込めたはずなのに、華琳は秋斗がするように周りに自分を出したくなった。
もやもやとやぼったいモノが胸に湧く。この感情は何か……華琳はチクリと胸が痛んで眉を顰めた。
――ねぇ、黒麒麟。お前は本当に、其処だけは私と全く同じだった。だって……
それは寂寥……誰も並ぶことのないこの場所で、誰かが同じだという事実が欲しいのかもしれない。
誰も知らない華琳の本質。彼女が何故、この世を変えたいと願うのか……理解者はたった一人。
――お前はこの世界の全てを愛していた。だから救えないと知って、多くの愛しいモノを無駄にしたと知って壊れた、そうでしょう?
生きる全てを愛している華琳は、彼が壊れた理由に辿り着く。それなら壊れるはずなのだ、と。
敵味方の区別なく想って、強いる理不尽は後の世の為に。誰にも理解されない異質で巨大な想いのカタチ。大陸を包み込む程の想いは、特別な誰かに向ける感情よりも優しく大きいモノ。
理解者のいない彼女は、長き時をそうあれかしと過ごして来たから壊れない。
ただやはり孤独に高みにある彼女は、自分と鏡合わせのような存在を求めていた。
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