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乱世の確率事象改変
相似で相違な鏡合わせ
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能だけれど、生きたい欲求に矛盾して命を賭け、何かを為したい自身の生き様を示す誇り高さは本当に美しい。その想いを理解出来ない輩は興味を惹くに値しない」

 彼女の嫌うモノは誇り無いモノ。命を賭けて戦った者達が居るから華琳は戦える。誇りは自身が天に向かって示す存在理由、彼女の言う誇りは、徐晃隊の掲げる意地とほぼ変わらない。

――だから華琳様は徐晃隊とあの男を認めていて、似ているからこそ苛立っていらっしゃるのか。

 さすがに口に出しては言えない。桂花にもやはり苛立ちはあったが、華琳にされた説明である程度呑み込めた。

――まあ、黒麒麟は私に近かったのに、今の秋斗は劉備に少しだけ近くなってしまっているのだけど……言わないでおきましょう。

 それは華琳と雛里、そして徐晃隊だけが気付いていること。
 一人だけで狂っていた黒麒麟は敵味方全てを背負い、一人の為にと狂いはじめている今の彼は味方だけしか背負えない。先の世の為にと計算して生かすくらいで、今の彼が黒麒麟と同じく敵を狂気に沈ませることは無い。

――多分黒麒麟なら……白馬義従や袁家の兵士のもっと多くを狂信させていたでしょう。やはり状況が……悪かったわね。

 少し寂しいと感じていた。同じ結果を求めれども、良き好敵手として存在しない。そして本物の理解者としても存在しない。

「ねぇ、桂花。私は人が好きよ? 汗水流して働く姿も、苦渋の中で精一杯抗うその様も、誰かに蹴落とされても這い上がろうとする強き心も、欲に堕落してケモノに身を変えてまで生き足掻く汚さも、例え今回の袁家であっても、同じには見られたくないし嫌悪するけど人としては好きなのよ。好きの反対は無関心。嫌いと好きは同居する。善悪の別なく人の生であり、きっとそれと似ているわ。
 私は賊徒であろうと才あれば用いる。自分の力で、自分の周りの世界を変えたいと望む人々こそ評価されるべき……世の崩壊を願わず、自分の欲望を飼い慣らし、この私の引くケモノと人との線の内側に入れるなら……ね」

 華琳にはクセがあった。
 秋斗と同じ、話を変えて思考を回すクセが。

――私が黒麒麟を欲しいと思った本当の理由は……きっと全く同じ想いを持っていたから。

 聞きこんでいる桂花とは別に、華琳の思考は止まらない。
 そして彼女は気付かなかった。本心と被せてしまっていることすら。
 それほど華琳は、未だに黒麒麟を求めていた。まるで壊れる前の秋斗が覇王と共に戦うことを求めていたかのように。

「……命を輝かせ、命を賭け、自分の意思で世界を変えたいと望む英雄達の乱世。これほどに楽しく愛おしいモノはない。その点で言えば、私は英雄にはなれないわね」
「そ、そんなことありません! 華琳様がなれないというのならあの男など――――」
「勘違い
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