相似で相違な鏡合わせ
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かり易く命を賭けてるのよ。一騎打ちはありふれているけどね、たった一人だけ、裏切られるかもしれないのに誰かを救いに向かうなんて誰が選ぶ? 黒麒麟は洛陽の戦でボロボロの命を賭けたでしょう? 等しく、投げ捨てるように命を賭けているから、あいつは兵士と同じ“英雄”に成れる」
例えそこに打算や計算が含まれていようとも、そう付け足して華琳は苦笑を零した。
「春蘭も秋蘭も桂花も、他の誰だって私と私の願いの為に命を賭けてくれてるのは知ってるわ。それが私の力と血肉になり、この乱世を越えて行ける。だけど……民や兵士からすればどうかしら」
じ……と見つめられた桂花はまた頭を巡らせる。末端までの巨大な想いの浸透は狂気に堕ちなければ不可能だ。それが出来るのは、コツコツと深い関係を積み上げて築く王に土台があった時だけ。その王は、命を賭けていたから絆を繋げたのだ。
その点を鑑みれば納得がいく。恐怖を抑える理由が、其処にあるのだ。世に平穏をと願う想いが、行動によって浸透させられるのだ。
「分かり易く命を賭けていることが誰の為なのか理解出来るから、あいつは大きな悪感情を向けられない……」
「ええ、言い方は悪いけれど、民は理不尽よ。自分達の為に命を賭けてくれるからその行いに魅せられる。兵士達もそう。あいつが命を賭けるから信頼出来て、恐怖と同程度の親しみが生まれるの。将としては落第だけれど、ただの兵士としては超一流……それが秋斗と黒麒麟の戦い方で、そうあるから味方の兵を綺麗な狂気へと落として行く。武人や将の理はあのバカには通用しない。軍師でもない将でもない王でもないアレは……ふふっ、なんなのかしらね?」
楽しそうに語った。
自己犠牲など犬も食わない……捻くれたモノならそう思う。ただし自分達と同じ心持ちで戦うのなら、それが指標となり、力となる。
怖ろしい策を行おうとも、武力が高くとも、血に塗れて泥臭く進む男だから、兵士達は肩を並べて戦い、その在り方に信頼を持てる。
「兵士達と同じ“英雄”……そう華琳様はおっしゃいましたが……」
桂花はこれまで聞いたことの無い例えに疑問を浮かべた。
いい質問ね、というように華琳は微笑んだ。
「私が兵士達を鼓舞する時にどうして英雄達と鼓舞するのか。それは彼らが命を賭けているからよ。私の描く世の平穏の為に使う命、いわば生贄。世界の平穏の為に死ぬ彼らを英雄と呼ばずしてなんと呼ぶ?」
歴史上の有能な者達を言うわけでは無く、華琳は彼らこそ讃えられるべきだと、そう言っていた。その考え方を聞いて、桂花の目が憧憬の色を浮かべた。
「何かを為したモノも英雄と呼ばれる。搦め手で風聞を得たモノでも英雄と呼ばれる。けれどね、私は彼らのように命を賭けている兵士達を一番に英雄と呼びたいの。生きることは人の本
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