相似で相違な鏡合わせ
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よう。
人との距離感を保つのが上手いなら、そういった感情を表だって向けられないはずだが……華琳の判断では否、其処に桂花は驚いた。
「確かに秋斗が他人に置く距離は居心地がいい。深入りせず、人を立てて、その上で自分を出すところとか……日常では、女関係以外は場の空気を読むし、自分を話の種にすることで他人の自尊心を満たす道化になったり、どの程度が線引きかを見極めるのが異常に早かったりと、通常の生き方をしていれば持てない人心操作と掌握の経験を持ってる」
華琳も桂花も知らないことだが、彼は競争社会で人の波に揉まれて生きてきた。現代で普通に働くということがどれほど他者に気を遣い場の流れを読まなければならないか、そして利の見極めを磨かなければならないか……この時代に生きるモノには分かり得ないことだ。
特に彼の生まれた国はその傾向が強く、幼い時から学校でそのスキルを身に付けるモノがほとんど。三年やそこら働いただけの彼であっても現時点でもこの世界に生きるモノ達とは比べものにならない程の経験を積んでいると言えよう。
だが、華琳はそれでも違うと言う。
「どうして兵が悪感情を向けないか。どうして民が帰還に対して私達の時と同じほどの歓待を示したのか。あんなにイカレているのに、どうして恐れず普通に接することが出来るのか……ふふ、やっぱり分からない?」
自分であれば、きっと恐れを向けられている。華琳はそう思う。
しかし秋斗は兵士達と普通に笑いあうし敬われない。そこらに居ても不思議ではないように扱われて、バカにされて、バカにし返して、それが見慣れた光景なのだ。
今回の戦で華琳と秋斗の行いに差異はほぼ無い。どちらも恐ろしくて、どちらも怖いはず。嫌悪されるはずで、戦がどのようにして行われていたか囁かれれば不安が芽生えるはずなのだ。
「そうね……徐晃隊を思い出してみなさい。そうすれば答えが出るわよ」
言われて思考を回す。
黒麒麟の代名詞とも言えるその部隊。桂花は徐州で部隊長と話もした。その想いを聞いてもみた。だから、きっと分かるはずなのだ。
――徐晃隊は……どうしてあいつを恐れないのか。どうしてあいつと戦うのか。どうしてあいつにだけ従うのか……。憎めるわけないって部隊長は言った。徐晃隊の始まりと、狂気に落とし始めるその指標は……あ……
彼が作る部隊の在り方と、涙ながらに語られた言葉の数々を思い出して、桂花は気付いた。
「……あいつが、本当に他人のことを想っているから、そして兵士達と同じく命を賭けているから、ですか……?」
「ふふ……正解」
満足そうに、華琳は机の上のお茶に口を付けた。ほう、と吐き出した仕草は艶っぽく、見た目以上に色香を放つ。
「あのバカはね、他のどの将とも違って、兵士と同じ土俵で分
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