相似で相違な鏡合わせ
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理か、面白い。店長があなたと出会ってからも試行錯誤をしていたというのなら本気にならざるを得ないわね。この私の舌を満足させられるようなモノかどうか……楽しみだわ」
「いや、そんな気合を入れなくてもいいんだが」
彼の言い分に興味が湧いた華琳の瞳が輝く。
これまで食べたことも無いのだ、いつも店長の店では新しい料理との出会いで感動を覚えているが、今回向ける期待は相応だった。
「何を言っているの? 店長との勝負は継続中よ。あなたが私に新しい料理を教えないから、客として味を確かめ、私の方がより良く出来る改善案を出すくらいしか勝つ方法が無いの。あの負けず嫌いに口出しできる程度には私も料理の心得があるけれど、ことあなたが教える料理に関しては、同じ土俵に立てなければどうしても先手は取れない。特に……洋食」
ジトリ、と彼を睨んだ。
多岐に渡る才能を持つ華琳であれど、料理の天才で努力家な店長を凌駕するには足りない。そも、味と知識を知っている秋斗が店長についている時点で負けはほぼ確定。
自身を唸らされる料理を食べるのは幸せだ。しかし一度くらいは店長をぎゃふんと言わせてやりたい。そんな負けん気の強さを持っている。
「美味いもん食えたらいいだろに」
「い、や、よ。だからせめて新しい料理を思い出した時は私にも同時に教えなさい」
「ははっ、すまんが却下だ。食べ比べしてみるのも楽しそうだけど、先にした約束を破るわけにはいかんからな」
また華琳の目が細まった。今度は不機嫌さを前面に押し出して。
そんな彼女の視線を受けた秋斗は、くるりと反転して入り口に向かった。
「ま、まあ仕事に戻るよ。街の長老達とも顔合わせしときたいし、俺が介入した案件の経過も知っておきたい。何より風呂入った後に会わないとダメな――――」
「待ちなさい」
一声。それだけで秋斗はピタリと止まる。何か言われるんだろうか、と恐る恐る振り返った。
そんな緩い彼に対して、華琳は厳しい面持ちを崩さずに一つの命令を下した。
「あなたは今日も明日も休みよ。今日は此れから風呂に行って、夕時から鳳統隊と食事。『かれぇ』とやらを作るのに集められないモノは店長に言って集めなさい。夜はそのまま雛里達と過ごして貰う。そして、明日は雛里、月、詠と一緒に四人でゆっくり過ごすこと、いいわね?」
「……マジ?」
「これは拒否権の無い命令よ。わがままの対価なのだから」
言いながら微笑む。
――此処で繋いでおかないとあなたは逃げるでしょう? 戻った時に必要なのは帰るべき場所。それを知っておくことは重要なのよ、秋斗。それにあの三人も喜ぶ。
戦では自分が役に立たずとも街では何か出来るからと待っていた月にも、忙しいのが分かっているのに詠や雛里といった頭脳明晰な子に
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