相似で相違な鏡合わせ
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水は自分達で各自持参でいいから……」
「お酒を飲むならつまみも必要じゃない。あの者達の働きへの特別褒賞も必要だから用意しましょう」
「嬉しいんだが……無しで。大鍋使ってカレー作るんだ。材料は持ち寄りでな。なんでも黒麒麟とは休日にそんな感じのことしてたらしい」
「へぇ……兵士達と料理をねぇ……というか、かれぇって何?」
「荒っぽい味付けの料理は得意なんだと。あー……カレーってのは大陸から南の方の料理でな、店長にスパイスの組み合わせを考えて貰ってたんだ。スパイスってのは……なんだろ、イロイロな香辛料を混ぜたモノって感じ。辛い系とか」
辛い、と聞いて華琳の雰囲気が少しだけ不思議なモノになった。
桂花は新しい料理の名に僅かに反応するも、顔を上げずに耳だけそばだてる。
「そう、辛い料理なの。店長の店では滅多に辛いモノは出て来ないから知らなかったわ」
「……まだ出して無いぞ。なんでもスパイスの組み合わせで納得するもんが無かったらしい。ほら、店長って拘り出すと止まんねぇし」
「ふぅん、泰山の麻婆よりマシだといいけど」
言い方に違和感があった。ほんの僅かだが。棘、と言えるかもしれない。
ああそうか、と気付いた彼は納得というように手を叩く。そういえば華琳はいつも甘いモノを好んで食べていたのだ。
「なんだ、お前さん辛いの苦手――――」
「秋斗? 私に、苦手な、モノは、無いわよ」
鋭い視線。区切られる言葉、突き刺さる威圧。
静かであるのに強い言葉に、彼は圧されて顔を引き攣らせた。
「お、おう」
「いい? 苦手というのは弱点があるということ。私にそんなモノは無い。
辛いモノは舌を麻痺させ味を曖昧にしてしまう事が多いから余り食べないだけよ。あなたも料理が好きならそれは分かっているでしょう?」
「……そりゃあ、まあ……でも――――」
「皿の上に並べられた料理の彩、胸の内まで湧き立たせるような香り、そして舌に乗せられた時に広がる食材と味付けの織りなす調和……こと料理に至っては最後の一つは欠かせない。だから調和を乱す確率の高い辛いモノはなるべく一品だけで食べるようにして、その時の食事を万弁なく有意義に楽しむ。私はそう決めてる」
これ以上言えば、きっと華琳は怒るだろう。
普段なら軽く流すはずなのに、何処か子供っぽく言葉を並べ立てることから見ても明らかに苦手なのだ……と分かっても、さすがに口には出せなかった。
「……まあいいや。でもカレーはな、お前さんが想像してるような辛さじゃないぞ。味を潰すってのは言い得て妙だが、多くの料理に新しい道を広げる材料にもなり得るような……すまん、表現しにくい。彩りはある意味でそんなに綺麗じゃない。あー、でも香りは申し分ない」
「……ふむ、見た目が全てでは無い未知の料
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