相似で相違な鏡合わせ
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確な目標が出来た事でより一層渇望が燃え上がり、彼らを強く育て上げる。
そうして、得てして妙ではあるが、彼が狙ったわけでは無い事柄でも、何故か彼らの心を高めさせる。
雛里は思った。
――記憶を失ったことすら彼らが乗り越えるべき試練に等しい。まるで彼と彼らが世界に嫌われてるみたい。それでも……
あくなき向上心は子供のようでバカらしい。世界を変えるのはいつだって変わらず曲がらないモノ達だ。
足掻く者、と華琳は黒麒麟を評価した。彼と彼らが同じであるなら、やはり彼らも足掻く者。
――誰の別なく、彼らは英雄として理不尽な世界に抗うんだ。秋斗さんや華琳様、皆と同じように。
足掻く者は、いつの時代でも英雄に育って行くから。影響を受けた月も詠も、分野は違えどそうあれかしと心高めて上り行く。
自分も……と心の火を燃やし、雛里は彼と共に月光の上、民の笑顔を受けながらまた羽を大きく育てはじめた。
昼下がり。そうこうしている内に辿り着いた城で、雛里と猪々子は湯浴みに向かい、秋斗は報告等の為に華琳の執務室に来ていた。
書簡竹簡木簡の山を並べて筆を動かしている華琳と、その横には秋斗の話を耳半分に聞きながら仕事を黙々と熟す桂花。まあ、所々で彼を睨んでいるが。
ふう、と華琳は話の区切り辺りで筆を置く。
「――――って感じで文醜隊の掌握と練兵も並行して来た。益州への旅には鳳統隊の二百人くらいを貸してくれ。互いに譲れないもんがあるらしいからいい刺激にもなるだろ」
「時間を有意義に使えるようで何よりね。手間が省けて助かるわ。鳳統隊については小隊毎の個別練兵が確立されてるから構わないけど。そちらで交渉後にして貰う行動予定は後で話す」
「交渉後の予定?」
「今は話してあげない。頑張って予想しなさい」
「……相変わらずなこって」
ほっと肩を落とした。にやりと笑った華琳の顔を見て何処か安堵を感じたから。
所詮長い思考時間が無ければ天才達の足元にも及ばない。切片を与える側の多い彼ではあるが、こうして直接的に話を組み立てるのは苦手であった。
華琳もそれを分かった上で彼を試し、成長するか否かを見ていたりする。友達になる為に追い駆けているとは言っても、会社の上司と部下のようなこの関係が何よりも秋斗には居心地が良かった。彼にとって社畜根性が染みついた現代人の性はどうやら拭えきれないモノらしい。
「ん、りょーかい。そっちから他に主だったことは?」
「そうね……詠の荀家所属が決まったくらいかしら。挨拶に行くのは五日後。あなたと雛里以外には戦功の褒賞も与えたけど……何か望みはあるかしら?」
「俺からは無いかな。ああ、徐晃隊と飲む酒と夜に練兵場を貸してくれたら嬉しい。安いやつで構わん。潰れた奴ら用の毛布と
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