4部分:第四章
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帝にもか」
「左様です」
「怨霊達は一応は消えたのだな」
「とりあえずは消えました」
清明は道長の問いにこう答えた。
「ですがこのままでは。怨霊というものは」
「怨みを完全に消さぬ限りまた蘇ってくるものだな」
「その通りです、彼等の魂は不滅です」
肉体はそうではないが魂というものはそうなのである。だから一度消されても時が経てばまた蘇る。とりわけ怨霊という存在はそうであるのだ。
「では。鎮めるしかあるまい」
それを聞いた道長の決断はこれであった。
「寺に社を建ててな。それで彼等を鎮めるのがよかろう」
「是非共そうされるべきです」
清明もそれに賛成するのであった。
「悪しき霊は怨みを容易には消しはしません。しかし」
「その心を鎮めていけば少しずつだな」
「はい。それしかありません」
「わかった。しかし」
道長は言うのだった。あらためて何かを思ったかのように。
「人の怨み程厄介なものはないな。わしはそれを買う立場であるしそういうことをしてきただけにそれがわかるわ」
「ですか」
「うむ。わしとて神経がないわけではない」
彼も人である。それならば感じるところがある。この度の怨霊についてはとりわけそうであった。そうして彼が至った結論とは。
「わしも。いずれは彼等の菩提を弔おうぞ」
そのせいかわからないが道長は後年出家する。平安時代においては老年に達すると出家するのが普通であった。だがそこにこの辻の話があったかどうかは彼以外は知ることがない。清明もまたそれについて何も話すことがなかったからである。今は昔の話である。
あわわの辻 完
2007・12・9
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